読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

まはら三桃「たまごを持つように」(講談社 2009)

〈あとがき〉にある「弓道が真ん中にある女子中学生のお話です。書き終えて、今すがすがしい気分です。」がまさしくそのまんま。読み手も同じように清々しさを味わっています。 余計なサイドストーリーがなく、4人の中学生が弓道を通して丸ごと自分を知る青…

越智章仁 CD「海のように」「マイフレンド」

かしわ哲「あったかさん」の中で、著者がピアニスト・越智章仁さんとの出会いをかなりのページを割いて割いています。 そういえばと思い出し、図書館から「海のように」(1997)と「マイフレンド」(2000)の2枚を借りてきた。聴くのは、20年以上…

なぎら健壱「アロハで酒場へ」(双葉社 2022)

気楽に読め、70歳でも気ままさを味わえることを教えてくれる。 酒場が好きで、趣味で遊ぶ人にはピッタリ。 第2章「日常を忘れる…趣味について」の中で、昔テレビで放映していたアメリカのテレビドラマ「グリーンホーネット」に出ていたカトーが、ブルース…

堀直子「わたしたちの歌をうたって」(文研出版 2022)

短歌をテーマにしているようなので手を出した作品。 実際は、子どもが抱えている問題や辛さをどう理解するか…とりわけやっかいな家族との関わりがカギになっていた。 母親が再婚し、父親となった人との距離や赤ちゃんが生まれて疎外されていると感じる女の子…

湯本香樹実・文 酒井駒子・絵「橋の上で」(河出書房新社 2022)

とってもイヤなことがあって、橋の上から川を見ている少年のざわつく気持ちが短い文からピリリと感じられます。 イヤなことから逃れるためにひょいと飛び越えてしまいそうになる危うい心を静めるためには、そんな気持ちを知り生き延びたおとなの存在が必要な…

新井素子「この橋をわたって」(新潮文庫 2022)

2019年に作家生活40周年を記念して出版した単行本の文庫版。 いろいろなパターンの短編とショートショートをまとめた作品集。 古くからの新井素子ファンではなくても、読んでふわっと心地良くなる物語が複数はあると思う。 個人的には、「橋を、架ける…

まはら三桃「無限の中心で」(講談社 2020)

まはら三桃は好きな児童文学者の一人。「材料」を駆使して読ませる物語を作るのがうまいなと思っています。今作では「数学」が物語の材料で、主人公・高2の女の子/とわが抱えるいとこの澗(かん)への消しがたい感情と数学を生涯に捧げる少年たちの心根が…

かしわ哲「あったかさん」(小学館 1998)

サブタイトルは、「サルサ・ガムテープからのメッセージ」。 タイトルの「あったかさん」は、著者が、新潟県の中部地域のお年寄りたちが、知的に障害をもった人たちを、あ「あったかさ」と呼んでいたにヒントを得た造語で、とても心地良く、もっともぴったり…

武田砂鉄「べつに怒ってない」(筑摩書房 2022)

著者の気持ちにちょっと引っかかったり、あれっそういえばという刺さりこんできたことをさらりとまとめたエッセイ集。見開きのページに収め、文のとっかかりがすんなりと入れる…上手さプラス心を寄せてしまう親近感がある。 最初から読まず、適当にページを…

サルサ・ガムテープ「アイタイ!」

先週、テレビのチャンネルをいじっていたら「ハートネットTV」でサルサ・ガムテープが出ていて、「アイタイ!」という曲を演奏していた。短い詩のフレーズを繰り返し、ゴキゲンなロックンロールの曲に心躍る、ウキウキしてきた。 詩とリズムが裏打ちにきち…

ドン・フリーマン「門ばんネズミのノーマン」(BL出版 2008)

ノーマンは美術館の裏手にある秘密の抜け穴を守る門番のネズミで、美術館の地下室にしまっているお宝の美術品を仲間のネズミたちを案内しています。 ノーマンには絵を描いたり針金で工作をする趣味があります。ある日、美術館の立て札で彫刻コンテストの作品…

ドン・フリーマン「ターちゃんとペリカン」(ほるぷ出版 1975)

よく練られたお話でお気に入り。 毎年ターちゃん家族は、夏休みにいつもの浜辺をキャンピングカーで訪れます。 そこには顔見知りになった1羽のペリカンが去年と同じ場所の杭の上にとまっています。 ターちゃんは、今年はじめて魚釣りに挑戦。長靴を脱いでタ…

アドリア・シオドア:文 エリン・K・ロビンソン:絵 さくまゆみこ:訳「わたしと あなたの ものがたり」(光村教育図書 2022)

表紙の〈さくまゆみこ訳〉を見て読んだ作品。 経済的に恵まれ、教養・高学歴の両親に囲まれていると思われる黒人の少女の物語。 白人ばかりの教室に茶色い肌の子どもは私1人。 奴隷制度があった時代の具体的な生活や人身売買、公民権運動が起きた時代のデモ…

ドン・フリーマン「やぎのグッドウィン」(福音館書店 2019)

ドン・フリーマンの娘さんが〈あとがき〉で、ドン・フリーマン夫妻が牧草地のヤギがうれしそうに絵の具をくちゃくちゃ噛んでいるのを見て、そのことを題材として絵・文の原稿を書き、生前何回も書き直していたことを綴っています。 この物語は、農夫に飼われ…

オリヴァー・ジェファーズ:作 tupera tupera:訳「きみとぼくが つくるもの」(ほるぷ出版 2021)

「ほら、ここにいるよ」の次に読んだ絵本。 サブタイトルは、「いっしょに みらいを いきていくための けいかく」。 お父さんと娘が道具を手に取り、〈生活するため〉の家や時を知るための時計…道具を使う・使えるようになると自分で生活・未来を切り開いて…

オリヴァー・ジェファーズ:作 tupera tupera:訳「ほら、ここに」(ほるぷ出版 2019)

サブタイトルは、「このちきゅうで くらすためのメモ」。作者は、とびらの文で、息子が生まれて2ヶ月の間に〈息子:君〉に充てて作った絵本で、〈この世界のことが理解できるように、君が知っておいた方がいいと思ったことをメモにした〉と書いています。 …

堂場舜一「鷹の系譜」(講談社 2022)

物語の始まりが昭和天皇が崩御した日。過激派の内ゲバのような鉄パイプによる殺人事件が発端で、警視庁捜査一課と公安一課の刑事が組織の思惑とは別に、個人的なつながりのバランスを取りながら事件の真相に近づいていく。 連絡の手段がポケベルと公衆電話、…

tupera tupera「しろくまのパンツ」「ねずみさんのパンツ」(ブロンズ新社)

2冊揃って対の関係。 「しろくまのパンツ」では、シロクマがパンツをなくしてしまい、ネズミがパンツ探しを手伝うストーリー。見開きの右側に穴あき仕掛けでいろいろなサイズ、色、柄のパンツがあり、それをめくるとそのパンツをパンツをはいた動物が現れま…

原案:ドン・フリーマン 作:BGヘネシー 絵:ジョディー・ウィーラー 訳:木坂涼「コールテンくんのクリスマス」(好学社 2021)

この作品を読むと、「クマのコールテンくん」の始まりにつながり、〈コールテンくん〉の名前とズボンやボタンの秘密も判明するというオマケたっぷりの物語。 この作品は、ドン・フリーマンが直接作った作品ではないようだけれど、ここまでていねいに作られる…

小手毬るい・作 こしだミカ・絵「うちのおかあちゃん」(偕成社 2022)

物語を書いている作者の内容とずいぶん違うなと思い、ツイッターを覗くと作者の母親をモデルにしたとのこと…それで納得。 目の手術の失敗で視力がなくなっていくお母ちゃんの〈以前のこと〉には触れず、子ども(まりえ)目線で感じる今のお母ちゃんのたくま…

ドン・フリーマン「コールテンくんのポケット」(好学社 2022)

訳は詩人で絵本作家の木坂涼さん。1982年にぽるぷ出版社から発行された「コーちゃんのポケット」の新訳版。 表紙の基調となっている色が明るくなり、訳者の変更に伴い、タイトルもちょっと変わりました。 タイトルの変化は訳の変化にもつながっているよ…

斉藤洋「翔の四季 秋 黒と白のあいだで」(講談社 2022)

「翔の四季」シリーズ2作目。前作「翔の四季 夏 かげろうのむこうで」は2021年、偕成社から出版。翔の友だち・涼は普通の人には見えないものが見える能力があります。翔は涼の〈見える・見えない〉を通して、人やものごとには見方によって見え方・事の…

三浦太郎「みち」(あすなろ書房 2022)

これまでなかった三浦太郎さんの新作絵本。線・色づかい・見開きの構図すべてが細かくデザインされた作品が特徴だと思っていたので、今作はビックリ。 一本の線(みち)を女の子と男の子とがたどり、ページを開くといろいろなことが待っている、表れる…ペー…

魚住直子「考えたことなかった」(偕成社 2022)

表紙の裏に「ジェンダーバイアスと、どこかでつながりあった社会のしくみに気づいて考えはじめる男の子の物語」と作品を紹介しています。 主人公は中2の颯太。ある日、颯太はネコ(にょい)に声をかけられます。〈自分は未来のお前だ、自分はみじめな人生の…

スージー鈴木「EPICソニーとその時代」(集英社新書 2021)

タイトルが気になり入手。エピック・ソニー時代のミュージシャンをたくさん取り上げ、日本初のロック・レーベルとミュージシャン、時代との関わり方を解説している。 個人的には、エピック・ソニー・レーベルでは、佐野元春、THE MODS、一風堂、バービー・ボ…

マイ・シューヴァル ペール・ヴァールー「密室」(角川書店 1976)

「マルティン・ベック」シリーズ8作目。これまでとはずいぶん趣が違う作品。まずは前作で犯人から銃弾を受け、1年以上の入院を経ての職場復帰。 復帰後初の操作事件は、チームだったコルベリやラーソンとは離れ、たった1人での捜査。それも初動の見込み捜…

リタ・クーリッジ CD「RITA COOLIDGE NICE FEELIN’」

1971年発売の2枚のレコードをカップリングしたCD(2009年)。 DVD「マッド・ドッグズ&イングリッシュメン」やレオン・ラッセルの「ライブ」を聴いている内にリタ・クーリッジの声を聴きたくなり、ソロ初期のカップリングCDを入手。 ファー…

石田衣良「ペットショップ無残」(文藝春秋 2022)

1998年の第1作から24年を経てシリーズ18作目。時代と社会の片隅を映し、若い世代が背負う・抱える生きづらさや問題提起を感じることができるシリーズとして読んでいる。 トラブルシューターのマコトの変化は少ないが、最近の作品ではGボーイズのキ…

カバーされる曲がすばらしいJ.J.ケール

J.J.ケールを知ったのは、エリッククラプトンが「アフター・ミッドナイト」をカバーしたことだと記憶している。その後、エリッククラプトンの定番となる「コカイン」もJ.J.ケールの曲だと知った次第。 ただ、個人的にはレーナードスキナードがカバーした…