読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

なかがわちひろ・作「かりんちゃんと十五人のおひなさま」(偕成社 2009)

〈おひなさま〉に込められる〈いろいろな人たちの気持ち〉がたっぷり描かれている作品…かと。 〈あとがき〉に物語を書き上げるために2年の歳月を要した書いていますが、お話の細部にわたりじっくり時間をかけて書き込んだことがうかがえます。 主人公の女の…

吉藤オリィ「オリヒメ 人と人とをつなぐ分身ロボット」(子どもの未来社 2023)

いろいろな理由で外に出て働くことができない人や遠くに住んでいる人たちが、自分の分身ロボットを操作して働く〈オリヒメ〉の紹介と、オリヒメを開発した吉藤オリィさんの生い立ちから開発にいたるまでの経緯や人との関わりを描いた作品。ロボットという機…

濱野京子・作「シタマチ・レイクセド・ロード」(ポプラ社 2023)

本を読むのが粋な女の子・希和子が小学校からの友人に誘われ、廃部になりそうな文芸部に入るところから物語がスタート。希和子に想いを寄せる後輩の男の子が希和子に投げかける言葉の数々に触発され、希和子自身が気づいていない才能に目覚める瞬間がクロス…

村上雅郁・作「きみの話を聞かせてくれよ」(フレーベル館 2023)

気持ちのすれ違いや努力が報われないこと、自分自身を縛ってしまうイメージ…いろいろな心のしこりを1人の男の子がちょっかいを出すように聞き、それがしこりをほどいていくきっかけになっていく…7つのつながっていく短編がそれぞれ絡み合い、読んで深まり…

なかがわちひろ・作「おじいちゃんちでおとまり」(ポプラ社 2006)

表紙をめくると「おじいちゃんちでおとまり」する理由がわずか4つの絵で表現されています。家族3人で両親は共働き、〈ぼく〉はけっこう自由気ままな性格だってことも分かります…うまさを感じる出だしです。 〈おじいちゃんち〉の居間には、世界中から集め…

角野栄子・作 さとうあや・絵「はな とりかえっこ」(偕成社 2023)

とても楽しい幼年物語。くしゃみアレルギーの要素もあり、今の時代にも合っています。 アラさんは、花がいっぱい咲いている春の空気の中、おもいっきり深呼吸をした瞬間、くしゃみが出て止まらなくなります。3日も続くと気持ちが悪く、何も手wpつけられま…

森絵都「あしたのことば」(小峰書店 2020)

帯にはに〈言葉をテーマに綴る8つの物語〉とあり、作者が選び取り、言葉を大事にしたパターンの違う短編が詰まっています。1編ごとに違う画家がタイトルの絵を描き、物語の雰囲気や色あいが違うことを印象づけていますが、何より書きわける作者のすごさを…

なかがわちひろ・作 高橋和枝・絵「とっても すてきな おうちです」(アリス館 2023)

息の合った2人の作家の組み合わせで、心地良い物語。 アリ、チョウチョ、クモ、ツバメ、ネコが順につながりあって、それぞれ自分の巣/家を自慢し合うほほえましい物語。 自慢のポイントが、それぞれ違い、その違いの特徴がなるほど…です。 最後まで読むと…

マイケル・モーパーゴ:作「西の果ての白馬」(徳間書店 2023)

作者の前振り〈はじめに〉が、5つの短編すべてに流れている肝そのもの。 イギリスの南西の端にある半島にゼナーという小さな村があり、〈大昔からこの村では、説明のつかないふしぎなことがたくさん起こってきた。たとえば、人魚やスプリガンという妖精、ノ…

ザ・キャビンカンパニー「がっこうにまにあわない」(あかね書房 2022)

晴れた日の朝、7時47分。男の子が学校に向かって必死に走っています。8時までに着かないと遅刻です。とっても大事なことが学校の行事であるのです。 でも時間が迫る中、邪魔すること・ものが道の途中に待ち構えています。 大胆な構図やダイナミックな絵…

なかがわちひろ・作「まほろ姫とにじ色の水晶玉」(偕成社 2017)

「まほろ姫」シリーズ2作目。 大テングの弟子になって定期的に勉強を教わるまほろ姫とタヌキの茶々丸ですが、今回はテングさまがお出かけするので違う展開に。でも、テングさまがお出かけするときに落とした〈よくばりぶくろ〉が最後においしいテングさまの…

なかがわちひろ・作「まほろ姫とブッキラ山の大テング」(偕成社 2014)

作者はいろいろなタイプの物語を書きわけていますが、今回は日本の風土を活かした楽しい物語。 タヌキの乳母:砧に生まれたときから育てられたまほろ姫と砧の子どもタヌキの茶々丸の冒険物語でシリーズ1作目。 まほろ姫と茶々丸は、砧から化け方を教わり、…

斉藤洋・原作 宮本えつよし・絵「こわいけど、おもしろい おばけずかん かがくのふしぎ」(講談社 2023)

「おばけずかん」シリーズの変化球的作品。これまでに登場したおばけに絡めて〈ふしぎ〉を解説してくれる楽しいお話集。 トイレの花子さんに絡めて、トイレットペーパーは水に流れるけれど、同じようなティッシュペーパーはどうして流れないのか?など…たく…

昼田弥子・作 シゲリカツヒコ・絵「かぜがつよいひ」(くもん出版 )

風の強い日、お母さんが買い物にでかけ、留守番の姉・弟が始める〈しりとり〉遊びを〈クセが強くてシュールな絵〉が子どもを引きつけて放さない作品。 「じょうろ」「ろくろ」「ろてんぶろ」で〈ろ〉始まりの言葉が見つからず、そこからとんでもない〈へんて…

リンダ・ロンシュタット DVD「FAITHLESS LOVE](1980)

数年ぶりに観る。70年代前半から中頃の彼女のヒット曲がてんこ盛り。しっとりの婆ラード、明るいカントリー、古いロックンロール、力強いロック…自身の曲やカバーを含め、貫禄のステージが観られる。 この作品は、テレビ放映をDVDにしたもの。さほど大…

元ちとせ×坂本龍一「死んだ女の子」

昨日の「報道特集」で、金平茂紀キャスターが元ちとせに「死んだ女の子」の録音に関して坂本龍一氏との関わりをインタビューしている映像が流れた。 元ちとせさんと坂本龍一氏のやり取り、ニューヨークで録音したときの坂本龍一氏のエピソード(この曲の意義…

伊藤充子・作 ながしまひろみ・絵「にわか魔女のタマユラさん」(偕成社 2022)

ながしまひろみさんの柔らかで温かみのある絵が、ほほえましい物語の世界を広げています。 おかっぱ頭のタマユラさんがしている喫茶店は、ミネストローネとシフォンケーキがおいしくて評判の店。ある日、タマユラさんがヨルさんと呼んでいるお客のおばあさん…

CD「ブレイクダウン・ライブ」「ウィーピング・ハープ・妹尾 Messin' around」

何の気なしに数年ぶりに2枚のCDを聴いた。 若い頃の近藤房之助のギタープレイとボーカルにさすがと思いつつ、数十年前、町の集会施設の視聴覚室で体験した妹尾隆一郎と服田洋一郎のライブを思い出した。 観客限定だったのかごく少数の人だけを相手に、2…

なかがわちひろ・作「ぼくには しっぽが あったらしい」(理論社 1998)

人類や動物の進化の歩みを〈しっぽ〉を代表的に選び、しっぽがあったらどうなんだろう?を子どもたちに考えさせてしまううまい読み物。 〈しっぽ〉から始まり、〈体毛〉〈うろこ〉〈触覚〉〈超音波〉など今は失われてしまった器官や機能を〈もしあったらどう…

アダム・レックス:文 クリスチャン・ロビンソン:絵 なかがわちひろ:訳「がっこうだって どきどきしてる」(WAVE出版 2017)

オリジナルのタイトルは、「SCHOOL'S FIRST DAY OF SCHOOL」。これが「がっこうだって どきどきしてる」になる…訳のうまさがピカイチ。 新しい小学校が建設され、用務員が学校が始まる前の掃除をしているときに、〈学校〉が用務員に話しかけるところからお話…

マイケル・モーパーゴ:作「ガリバーのむすこ」(小学館 2022)

「ガリバー旅行記」を題材にしながら、作品を読んでいなくても読んでいくうちに実に良いタイトルだなと感じる物語。 アフガニスタンで父親と妹を内戦で失った男の子が、母親より先に船でイギリスをめざしつつ船の難破で小人の国にたどり着きます。 その国に…

富安陽子・文 降矢なな・絵「まゆとブカブカブー」(福音館書店 2001)

「やまんばのむすめ まゆのおはなし」シリーズの1冊ですが、月刊絵本「こどものとも」50周年記念出版の限定版なので、ハードカバーではあまり知られていないかも。 雨が静かに降り続く日、みゅはうれしくなり、やまんば母さんに言って散歩に出かけます。…

CD「LIVE! SOOO BAAD REVUE」(1999)

オリジナルレコードは、1977年の発売。数十年ぶりに聴き直し。 北京一、砂川正和、石田長生、山岸潤史、国府輝幸、永本忠、土居正和というそうそうたるメンバーだったことを再認識。 今聴くと、1回で十分、お腹いっぱいの気分になるけれど、45年も前…

NHK・BS「ブルース・ブラザーズ」

久しぶりにBSで放映した「ブルース・ブラザーズ」を観た。DVDは持っているけれど、最後に観たのはずいぶん前。 一番印象に残ったのは、ジョン・リー・フッカーが街中の路上で「BOOM BOOM]を演っていたシーン。ビートがあり、凄みとカッコ良さ…

なかがわちひろ・作「カモのきょうだい クリとゴマ」(アリス館 2011)

これはお話ではなくノンフィクション。著者の子ども・ゲン君が大雨で水浸しになっていた田んぼのあぜ道に残されたカルガモの卵を持ち帰り、卵をふ化させ、ヒナを育て、近くの遊水池に放ち、著者の家族から離れ、親離れするところまでを綴っています。 観察記…

マイケル・モーパーゴ:作「ケンスケの王国」(評論社 2002)

ほぼ20年前の作品。 時代背景は、1980年代末。ヨットで世界一周をめざした3人家族の子ども・マイケルが飼い犬とともに海に落ち、流れ着いた無人島での体験を描いています。加えて、1972年、74年にグワム島、ルバング島から奇跡的に生還した横井…

富安陽子・文 降矢なな・絵「まゆとおおきなケーキ」(福音館書店 2009)

「やまんばのむすめ まゆのおじゃなし」シリーズから。 すてきな春の日。やまんばの母さんとまゆは、山に暮らす動物やオニたちに招待状を届けます。冬眠から目覚めた動物たちにすてきなご馳走を用意し、春のパーティを開こうというアイデア。 このお話では、…

まはら三桃・作「つる子さんからの奨学金」(偕成社 2023)

つる子さんは、主人公のわかば、いとこの樹の曾祖母。つる子さんが子どもの頃は、分家で女の子は高等教育を受けさせてもらえない時代、そんな理不尽に逆らい本家に座り込みをして進学することを勝ち取ったというエネルギーあふれる女性です。 そのつる子さん…

斉藤洋・作 ももろ・絵「キュリオと月の女王」(講談社 2023)

白いくま・しろくまのベベが人間の子ども・キュリオが会いたいという月の女王を探しに行く旅物語り。 キュリオは突拍子もないことをベベに言い出す子ども。ベベはキュリオの疑問や突拍子さにうまく答えるのができず、いつも困っています、でもそれがイヤでは…

なかがわちひろ・作「ハンカチともだち」(アリス館 2019)

はるちゃんは、お母さんに言われて学校に行く前に引き出しからハンカチを取り出しました。そのハンカチにはベッドで寝ている小人がいます。じっと見ていると寝返りをうちます。ちょっとビックリ。 お話は最初から不思議ですが、それが当たり前のようにごく自…