読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

佐藤まどか「トーキング・ドラム」(PHP 2022)

サブタイトルに「心ゆさぶる わたしたちのリズム」。小学校の放課後子ども教室で時間を過ごす4人の子どもたちが主人公。 父親との2人暮らし、シングルマザーの家族、両親が共働きで1人ぼっちがイヤ、家に居場所がない…さまざまな家庭・家族があることが前…

宮部みゆき「子宝船 きたきた捕物帖二」(PHP 2022)

大満足の物語。前作同様、表紙の装丁がお見事。三木謙次氏の絵も味があり、物語の雰囲気を伝えています。 北一と喜多次との距離が縮まり、コンビに近づいていく感触が最後の場面にあふれています。 喜多次が自然と自分のことを少しずつ明かし、北一が周りか…

神戸遙真「笹森くんのスカート」(講談社 )

作草高校の2学期の始まり。1年生の笹森くんがスカートの制服で教室に現れます。ここからクラスメイトのそれぞれの物語も始まります。 この作品は、クラスメイト5人が語る5つの章に分かれ、笹森くんがちょっとずつ関わりながら、それぞれの章の5人がちょ…

たかどのほうこ「みどりの森のなかまたち」(理論社 2022)

「のはらクラブシリーズ」2作目。1作目「のはらクラブのこどもたち」は2000年の発行。私は、昨年発行の「新装版」を読み、その楽しさにはまりました。 野外の自然の中で植物の観察や遊びが大好きな〈のはらおばさん〉に誘われ、のんちゃんがついていう…

金城実「沖縄を彫る」(現代書館 1987)

NHK・BSアーカイブ「沖縄は我が念仏」を観て思い立ち、道立図書館から借りて読む。 「残波大獅子」「長崎平和の母子像」「チビチリガマ世代を結ぶ平和の像」、3つの像を制作する過程や氏の思想を講演録を含め、文で書き表したもの。 当時大阪に住んで…

NHK・BS「ETV特集 沖縄の心(くくる) 共同売店」(再放送)

2015年放映の再放送。沖縄北部・山原地域の〈奥〉という集落にある「国頭村奥共同店」にスポットを当てた番組。 明治39(1906)年10月5日に、住民全員が出資して作った地域の売店で、沖縄でもっとも古い店。 地域の店であるとともに憩いやおし…

宮部みゆき「〈完本〉初ものがたり」(PHP文芸文庫 2013)

ずいぶん前に「初ものがたり」を読み、当時は続編が出るものと思いつつ、そのまま忘れていた作品。最近、短編1話を加えた「愛蔵版」とその後短編3話を追加した「完本版」の存在を知り、図書館から借りて読みました。 「初もの」を題材とした〈回向院の親分…

NHK BSプレミアム「プロジェクトX 8ミリの悪魔VS特命班 最強の害虫・野菜が危ない」

リマスター版での再放送を観た。沖縄本土復帰の1972年、久米島まで上陸していたウリミバエが沖縄で発見され、本土へ出荷していた沖縄産の野菜が厳しく規制されます。ウリミバエの繁殖力はすさまじく、このままでは沖縄中に繁殖し、本土への上陸も間違い…

宮沢和史「沖縄のことを聞かせてください」(双葉社 2022)

1991年に発表した「島唄」から30年、著者が通い続けた沖縄への思いを10人の人たちと交わした対話集。 あとがきまで含めて485ページというボリュームで、しかもさまざまな分野に富み、注釈もていねい、コロナ禍の中、短期間ながらも集中力あふれる…

重松清「答えは風のなか」(朝日出版社 2021)

10の物語を収めた短編集。帯に「自分の書くお話には〈答え〉なんかないんだと思っています。読んだあとには、むしろ〈問い〉が残って欲しい」と書いています。 物語の最後の言葉やふるまいがどうなるのかは、読む子どもたちが自分で考えて見つける、そんな…

小田嶋隆「上を向いてアルコール」(ミシマ社 2018)

先月亡くなった小田嶋隆さんの著作をちょっとずつ図書館から借りて読んでいる。 若い頃、「噂の真相」を定期購読していた時に小田嶋隆さんのコラムを読み、辛辣だけれど遊びもあり、うまい文を書く人だなと思って読んでいた。 今回は「上を向いてアルコール…

宮部みゆき「きたきた捕物帖」(PHP 2020)

「きたきた捕物帖二 子の宝船」を読むために、シリーズ1作目を読み直して思い出す。 表・裏表紙に主人公2人の少年と主人公を支えるメインのおとなたちが描かれ、読み終えて改めて表紙を見ると、タイトルを含め、なるほど思う。 岡っ引きで文庫屋の千吉親分…

「こころ旅」の馬頭観世音

7月14日放映の栗山町から長沼町へたどる途中にあった「馬頭観世音碑」をスタッフが紹介していた。台座の周囲を鎖で囲い、大きくてとても立派な碑。顔が三つで腕が6本(?)の三面六臂の像に見えた。 常呂町岐阜にある馬頭観世音は三面八臂。近くでは端野…

斉藤洋「生きつづけるキキ」(講談社 2020)

サブタイトルは「ひとつの〈魔女の宅急便〉論。 〈はじめに〉で、発行以来30年以上経っているにもかかわらず、「魔女の宅急便」が書店の棚に残り続けている理由がどこにあるのかを探ることが目的で、斉藤洋の視点で「魔女の宅急便」の意味や価値を探るもの…

直島翔「転がる検事に苔むさず」(小学館 2021)

著者2作目の「恋する検事はわきまえない」(2022)を先に読み、おもしろかったのでの最初のこの作品にたどり着く。 この作品の肝となっている久我検事が置かれている状況は、2作目のプロローグとエピローグにつながり、さらりと触れた事件の真相も2作目で…

NHK・BS「アーカイブ 沖縄返還50年(4)沖縄は我が念仏」

NHKの「こころの時代 宗教・人生」でタイトルの番組を再放送したのを観た。 金城実という彫刻作家を初めて知る。実に強烈な存在感。 大阪の夜間中学の美術教師として勤めるもなかなか生徒が集まらず、そんな中で在日の女性たちと平和の像を制作した体験の…

斉藤洋「ジークメーア 小箱の銀の狼」(偕成社 2021)

新たに始まったシリーズ1作目。作者の長編「アーサー王物語」の世界から数百年を経ながらも、大魔法師マーリンが書き残した予言の書「マーリンの書」に導かれ、泳ぎがうまく、弓の腕もあり、暗闇でも見える(作中では〈フクロウより見える少年〉)・ジーク…

映画「インビクタス 負けざる者たち」

午後放映の「NHKBSシネマ」で「負けざる者たち」を観る。 2009年制作、クリント・イーストウッド監督。映画はめったに観ないので、存在すら知らなかった作品。 1994年、南アフリカ初の全人種による普通選挙を経て大統領になったネルソン・マン…

モンキーズ「スター・コレクター」(1967)

14歳の時に買ったモンキーズのLPレコード。数十年ぶりにプレーヤーで聴き、思ったことをいくつか。 アルバム・ジャケットにサイケデリックな雰囲気が持ち込まれ、マイク・ネスミシ作曲の2曲にもそんな時代の空気が反映sれている。 「プリーザント・バ…

照屋林助「てるりん自伝」(みすず書房 1998)

照屋林助氏が膨大で縦横無尽に語ったことを北中正和氏がまとめた労作。 自伝の中で、「ブーテン先生の思い出」という章立てをして、「芸の上でわたしが大きな影響を受けたのはブーテン先生です」の書き出しから16ページを費やして「小那覇舞天」氏のおもし…