新井素子「この橋をわたって」(新潮文庫 2022)
2019年に作家生活40周年を記念して出版した単行本の文庫版。
いろいろなパターンの短編とショートショートをまとめた作品集。
古くからの新井素子ファンではなくても、読んでふわっと心地良くなる物語が複数はあると思う。
個人的には、「橋を、架ける」(句読点に物語の意気込みがある)、「黒猫ナイトの冒険}(冒険は自分が決めること)、「碁盤事件」(自分の存在って?)、「なごみちゃんの大晦日」(祟らない土地神様と少女の心持ち)がおもしろかった。「なごみちゃんの大晦日」はYAの定番にもできそう。
〈文庫版あとがき〉で、資料を探しに図書館へ行った時、探していた資料がその図書館にはなく、他の図書館から提供してもらい借りることができたことに「凄いわ、図書館」と書いています。当たり前だと思っている「相互貸借」や「資料の回送」が実はスゴいことなんだと気づかされた一文。