読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

斉藤道雄「治したくない ひがし町診療所の日々」(みすず書房 2020)

浦河に四半世紀通い詰めた著者だから書けた1冊。 浦河日赤の精神科を廃し、〈ひがし町診療所〉を始めた院長の川村敏明さんとスタッフ、そして診療所に通いながら浦河の町の中で暮らす人たちの苦労と明るさに満ちた奮闘が、著者の目を通して綴られている。 …

駅ピアノで「ア・チャンジ・イズ・ゴナ・カム」

きょうの放映の「駅ピアノ」は、オランダのユトレヒト駅。 ストリート・ミュージシャンが、サム・クックの「A Change Is Gonna Come」を演奏していた。字幕では、もっぱらゴスペルの曲を演奏しているとのこと。 久しぶりにこの曲を聴き、どんな歌い方、スタ…

村上康成「黄色い竜」(徳間書店 2022)

著者初の小説とのこと。〈あとがき〉で、コロナ禍で自然散策を重ねるうちに「体に沁みこんでいるザワザワを表現するための、新しい扉を開けてみたくなった」と書き始めた動機を綴っています。 子どもの頃に体験して胸の奥深くためている宝物のような思い出を…

「ぬくもり 〈動物〉時代小説傑作選」(PHP文芸文庫 2022)

「時代小説傑作選」シリーズの1冊。5人の作家による短編5作が収められているアンソロジーで、宮部みゆき「迷い鳩」と田牧大和「色男、来たる」の2作のみ読む。他は肌合いが合わなかった。 宮部みゆき「迷い鳩」は、編者の解説で「霊験お初捕物控シリーズ…

斉藤洋・作 森田みちよ・絵「おばけとしょかん 花子さんをさがせ」(講談社 2022)

コンビ復活か。そして〈おばけ〉を題材にした新しいシリーズの始まり。 読んで楽しい、おもしろいが一番!斉藤洋さんの本を読むとそう思います。 低学年の小学生にとっては80ページ近くあってけっこうなボリュームだけれど、話の進み方、文のうまさで一気…

夏川草介「本を守ろうとする猫の話」(小学館文庫 2022)

本の危機、読書の危機を救うために、4つの迷宮でそれぞれ〈本を助け出す〉課題に取り組む高校生・林太郎の物語。 古本屋・夏木書店を営んでいたじいちゃんが亡くなり、2人で暮らしていた林太郎は1人ぼっちに。そこへ人間の言葉を話すトラネコが現れ、〈林…

ヘレイン・ベッカー:作 サンドラ・デュメイ:絵 木村由莉:訳・監修 「化石のよぶ声がきこえる」(くもん出版 2022)

サブタイトルは「天才恐竜ハンター ウェンディ・スロボーダ」。〈化石の呼ぶ声がきこえる人〉と呼ばれるほどに化石を発見したり、クリーニング、レプリカの技術も長けているウェンディの子ども時代からの歩みを綴った知識絵本。 絵がとてもステキです。小学…

昼田弥子・作 光用千春・絵「エツコさん」(アリス館2022)

タイトルのエツコさんは、小6の子・真名のおばあちゃんで、昔は学校の先生。定年後は交通安全のボランティアを4年くらい前までしていました。 エツコさんは今78歳で認知症を患い、真名の両親と一緒に暮らしています。 物語は6つの短編連作で、5人の子…

山田美津子「やまだめいたちのえにっき」(理論社 2022)

特別なことがないと絵日記は書けない…そんなことはありませんと教えてくれる物語。 お休みの日のことを絵日記に書く宿題が出ためいちゃんは、書くことがないのでそのままお昼寝。目が覚めると何ページにもわたり日記が書いてあります。読んでみると、おやつ…

エイミー・ノヴェスキー:文 ジュリー・モースタッド:絵 横山和江:訳「世界はこんなに美しい」(工学図書 2022)

サブタイトルは、「アンヌとバイクの20,000キロ」。今から50年前の1973年、フランスのパリで暮らしていた女性・アンヌは、「世界中を旅したい。未知の場所へ。」、そう思い立ち、125ccのカワサキのオートバイで出発します。 形は絵本ですが…

村中季衣「奉還町ラプソディ」(BL出版 2022)

アーケードのある古びた商店街が物語の舞台。大政奉還によって武士の時代が終わり、殿様が武士に奉還金を配り、そのお金で商店街が生まれたという歴史だけはあるレトロな商店街。 物語を進めるのは、この商店街の近くに引っ越してきたぼく・さとしと家がまん…

八束澄子「ぼくたちはまだ出逢っていない」(ポプラ社 2022)

タイトルは、読み進めていくとなるほどと「しっくり馴染んできます。 中3の陸と樹、そして中2の少女・美雨、3人が主人公。3人それぞれが感じている疎外案や居場所のなさ、自分ではどうしようもないことや抱えていることを日本の伝統工芸が3人の結びつけ…

CD.DVD「アルバート・キング・ウィズ・スティーヴィー・レイヴォーン イン・セッション」

数年ぶりに両方を聴き直し、観直し。 日本版のCDを先に入手。曲の始まりや間で交わす2人の会話に日本語訳が付いているので、アルバム全体を楽しめる。録音は193年12月で、発売は1999年。このCDを聴いてからというもの、元となってる映像を何と…

東海林さだお「町中華の丸かじり」(朝日新聞出版 2022)

シリーズ45作目。安定した文の良さ、言い回しや目の付けどころは相変わらずのキレ…いつもながらにうまいなと思いつつ拾い読み。「町中華」という言葉は使っていないまでも、著者こそはずっと昔から日常的に町の食堂を描いてきたという思いがある。 一つひ…

斉藤洋「まちのおばけずかんハイ!」(講談社 2022)

小学生に大人気シリーズで通常版よりも多い13話が収められ、お得感があります。 よくもまあ考えたと思えるほどにたくさんのお化けとお化けに出逢う子どもやおとなたちの反応や対処の仕方が何よりも楽しい。 斉藤洋さん特有の言葉遊びのような言い回しに引…

ベック・ボガート・アピス「ゴーイング・ダウン」

久しぶりに「ベック・ボガート・アピス・ライブ・イン・ジャパン」のCDを聴き、「ゴーイング・ダウン」が収められていることに気づく。それで思い出したのが、「クロスロード・ギター・フェスティバル 2013」でジェフ・ベックがバンドのボーカルにベス…

小手毬るい「お母ちゃんの鬼退治」(偕成社 2022)

作家・小手毬るいさんが、母親を、母親と自分を、母親を支える父親を、作家になりたかった自分を綴った作品。作者・子どもと母親・おかあちゃんとの距離がテーマの一つになっていて、かなりシビアであったのにも関わらず文はどこか温かい、これが2人の関係…

「アンソロジー ビール」(PARCO出版 2014)

一つのテーマでいろいろな作家の文に出会えるので、アンソロジーは楽しい。特に、食べ物・飲み物は、その人のクセのような味が出てくるのでおもしろがって読める。 トップバッターに東海林さだおさんを据えたのがイイ!ビールと言えば、東海林さだおさんか椎…

ジェフ・ベック DVD[Live At RonnieE Scott's」(2009)

ジェフ・ベックが亡くなったというニュースはビックリ。 「クロスロード・ギター・フェスティバル 2019」で相変わらずのエネルギーあふれるギター・プレイを見せ、ビーチボーイズの「キャロライン・ノー」はうっとりするほどだった。 ジェフ・ベックは昔…

太田和彦「人生、油揚がある」(亜紀書房 2022)

〈はじめに〉で著者が付けたタイトルへの思いを感じながら読み始める。 思いつくままにさまざまなジャンルのエッセイが並ぶので、読み手も感じるままに拾い読み。 その中からいくつか感じたことなど。 「三」という数字が好きなことから三題噺のように続く「…

高野文子と昭和のくらし博物館「いずみさん、とっておいては どうですか」(平凡社 2022)

奇跡のような本。 昭和28年に建てた木造住宅と中の家財道具を丸ごと残して公開した〈昭和のくらし博物館〉館長の小泉和子さんが「この本に寄せて」に書いていますが、昭和30年代に少女期を過ごした2人の姉妹の日記や人形、おもちゃ類が丸ごと博物館に寄…

HTB開局50周年ドラマ「チャンネルはそのまま!」(再放送)

佐々木倫子さん原作のマンガ「チャンネルはそのまま!」(全6巻)をアレンジした実写版ドラマ。最初の放映を見逃していたので、観ることができラッキー。 原作マンガは何回読んでも言葉にできないワクワクする楽しさがあり、佐々木倫子独特の笑いのツボ、オ…

海老沢泰久「無用庵隠居修行」(文藝春秋 2008)

テレビでこのシリーズを観て原作を読んだ次第。 テレビと原作はかなりの違いがあるが、どちらもおもしろさは同じ。 同じ〈隠居〉でも、藤沢周平の「三屋清左衛門残日録」が藩の政治に巻き込まれながら身辺で起きる事件と関わりのある人々との人情の機微に触…

「沖縄発 沖縄の新聞記者」(高文研 2022)

琉球新聞社の記者が書いたコラムをまとめた本。6章あり、いくつかを拾い読み。 第1章の「沖縄と政治」は、沖縄の新聞記者でしか書けない視点のコラムが6本。尾長知事の病状をめぐる4ヶ月の動きを書いた「情報飛び交った体調報道」「最後の大立ち回りと〈…

「時代小説の楽しみ五 江戸市井図絵」(新潮社 1990)

けっこう古い全7巻のアンソロジー。18人の短編からつまみ食いのように選んで読んだ。 柴田錬三郎「江戸っ子由来」は、晩年の大久保彦左衛門が町人たちに語った話が元になって〈徳川譜代の町人、江戸っ子〉という呼び名が生まれたという物語。江戸という新…

喜納昌吉&チャンプルーズ「BLOOD LINE」(1980)

沖縄らしさを感じさせる曲が多いアルバム。完成度は高いが、衝撃度は最初に比べると少し薄かった。 今は喜納昌吉がボーカルの「花」というタイトルが当たり前になっているが、このレコードでは、女性陣がボーカルでタイトルは「すべての人の心に花を」だった…

喜納昌吉&チャンプルーズ「喜納昌吉&チャンプルーズ」(1977)

沖縄の音楽に触れた最初のレコード。初めて聴いたときは、まさしく〈チャンプルー:ごった煮〉の印象。これが沖縄の今の音楽なのかと思う部分と沖縄の民謡や日本の民謡なども感じられ、ふしぎな感覚を持った記憶がある。これが入り口となって、ずいぶんと沖…

濱野京子「空と大地に出会う夏」(くもん出版 2022)

〈さりげなく〉が詰まっている物語。 何ごとも合理的に考え、寄り道思考をしない小6のぼく・理一郎が、普段ならつきあう接点もない、ウマが合う訳のない〈海空良:みそら・大智:ひろと・亜梨子:ありす〉たちと出会い、〈自分にはない何か〉を感じ取る物語…

「弱さの研究 弱さで読み解くコロナの時代」(くんぷる 2020)

内容がバラエティに富み、「べてる」のいろいろなことを学べます。 高橋源一郎×向谷地生良×辻信一3氏のトーク・ライブ、向谷地生良×糸川昌成2氏の対談から向谷地生良が語るべてるの歴史、そして再び向谷地生良×辻信一両氏によるタイトルのオンライン対談。…

斉藤洋・文 広瀬弦・絵「西遊記15 名の巻」(理論社 2022) 

斉藤洋さんのシリーズもので唯一定期的に出版されている作品かも。 孫悟空にとって大切な存在は玄奘三蔵だけ、師の言動には時として反発は覚えても唯一の存在…この悟空の感覚が西遊記の根っこにあるように思えます。 今回の物語では、悟空が妖怪たちをできる…