読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

なかがわちひろ・作「かりんちゃんと十五人のおひなさま」(偕成社 2009)

〈おひなさま〉に込められる〈いろいろな人たちの気持ち〉がたっぷり描かれている作品…かと。

 〈あとがき〉に物語を書き上げるために2年の歳月を要した書いていますが、お話の細部にわたりじっくり時間をかけて書き込んだことがうかがえます。

 主人公の女の子・かりんのおばあちゃん・紫苑さんから贈られたおひなさまに込められたお守りとしての役割だったり、かりんが赤ちゃんの時に紫苑さんから贈られた犬のひな飾り〈あ〉〈ん〉がおひな様の家来でかりんの守り神だったり…。おひな様が〈守り子〉の災いやけがれを身に受けて川に流してしまう大切な役割を果たしていることなどを愛情深く描いています。

 また、かりんの友だちの家にあるそれぞれのひな飾りにも同じように、飾った人の気持ちがこもっていることも作者の温かい文で綴っています。

 楽しいしかけは、おとのさまとおひめさま、それに仕える者たちがかりんに語る茂御語りや行動。名前の付け方から各々の豊かな個性、そしてかりんに対するストレートな愛情、どれも心が温かくなるエピソードがいっぱい。

 180ページもありながら余計な部分がなく、最初から最後まで気持ちよく読み終える作品。

 3人の仕丁の1人がつぶやく数々(20箇)のことわざが、その時々の場面にぴったり。小学生には難しいことわざだけれど、〈あとがき〉の後に解説がついているのもご愛敬。

「かりんちゃんとのおひなさま」