読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

2023-02-01から1ヶ月間の記事一覧

佐川光晴「猫にならって」(実業之日本社 2023)

猫のけなげな出産・育児が物語の進行役を務めるミカズに生きる気力を与え、そのことが回り回って幾人もの人生の岐路に猫が現れ、ミカズとその源となる猫が羅針盤のように行き先を助言してくれる…まわりくどくいうとそんな印象の連作物語。 どの物語も最後に…

石川宏千花・作「保健室には魔女が必要」(偕成社 2022)

作者の作品を読むのは、「拝啓パンクスノットデッドさま」に続いて2冊目。 「拝啓パンクスノットデッドさま」は、パンクロックをキーワードに、生きていくためには音楽が絶対に必要…2人の兄弟、兄弟を支えるおとなたちの言葉やスタイルが強烈でした。クラ…

ポール・ハーブリッジ/文 マット・ジェームス/絵「つきよのアイスホッケー」(福音館書店 2023)

カナダの子どもたちにとって冬のスポーツはアイスホッケー。そのことがビシビシ伝わってくる絵本です。 森の中にある大きな池が2月になり、マイナス20度の日が続いて一面氷が張ります。村の子どもたちはその池でアイスホッケーをするのが待ち遠しくてたま…

岸田衿子・作 堀内誠一・絵「いかだは ぴしゃぴしゃ」(福音館書店 1987)

かなり古い絵本だけれども、おもしろさと絵は今もそのまま通用します。 子ぐまがお弁当を持っていかだで川を下り、途中でたくさんの動物を乗せて海辺でお弁当をみんなで食べる…いかだに乗る条件はお弁当を持っていること、ページをめくるたびに動物が増え、…

志津栄子・作 くまおり純・絵「雪の日にライオンを見に行く」(講談社 2023)

「ちゅうでん児童文学賞大賞」受賞作。審査員の斉藤洋。富安陽子両氏が選んだ作品なので、この文学賞受賞作は必ず読んでいる。 日本にやってきた中国残留孤児3世の唯人は、父親が日本に居場所を見つけられないまま中国に帰ってしまい、大阪で母親と2人暮ら…

香桃もこ・作 岡田よしたか・絵「イカにんじゅつ道場 ただいま弟子ぼしゅうちゅう」(福音館書店 2022)

とぼけた味でちょっとシュールで好きな作品。 〈食べ物〉を題材に愉快なお話を創っている岡田よしたかさんの絵が楽しい。 イカの忍者が道場を開き、弟子を募集。忍術を学びにやってくる魚やカニ、くらげに術を教えながらも、おいしそうなのでパクリ…。 とん…

谷川俊太郎・作 堀内誠一・絵「あっはっは」(くもん出版 2009)

少し古い作品。左のページに悲しそうな表情の女の子。右のページには〈あっはっは〉と笑う男の子。ラフな太い線でさっと描いたような絵がとても新鮮・斬新なデザイン。ページをめくっても男の子の〈いひひ〉〈うふん〉と笑い声が変わり、それに反応して女の…

プリシラ&オットー・フリードリック/文 ルイス・スロボドキン/絵「マシュマロおばけ」(瑞雲舎 2022)

半世紀以上前の作品。手抜きのようでどこか味のある、親しみの持てる絵のルイス・スロボドキンの作品。 アイルランドからアメリカに渡ってきたエスターおばさんと3人(?)の子どもおばけが楽しみ、騒ぎを巻きおこす楽しい物語。 タイトルのマシュマロがハ…

斉藤洋・作 いとうあつき・絵「こえてくる者たち 翔の四季」(講談社 2022)

シリーズの夏・秋を過ぎて冬を迎える3作目。タイトルの「こえてくる者たち」の意味を考えてしまう作品。 見えないものが見えてしまう涼、聞こえない声が聞こえてしまう翔は、普通に考えれば「普通の人を越えて・超えてしまった人」なのかと思うけれど、一方…

おおぎやなぎちか・作 イシヤマアズサ・絵「俳句ステップ」(佼成出版社 2020)

小学校の国語で〈俳句〉の授業があるせいか、〈俳句〉を題材にした児童物語が多くなってきているように感じます。 この物語では、自分に自信のない小3の女の子がひょんなことから出会ったおばあさんから俳句を教わり、自分が見たこと、感じたことを五七五の…

漆原智良・作 やまなかももこ・絵「じいちゃんの島は宝島」(フレーベル館 2022)

作者最後の作品。今の時代には少ない気持ちよく読める物語。 小学校4年生・悠斗の家に定年で仕事をやめたおじいちゃんが同居するようになり、それまで家にいたお母さんが働きに出るようになり、帰宅後はおじいちゃんとの留守番が日常に…。お母さんは、「…な…

今野敏「審議官 隠蔽捜査9.5」(新潮社 2023)

人気シリーズのスピンオフ集。主人公・竜崎の家族それぞれの推理や正義をめぐる物語や異動前の大森署の竜崎ロス、新しい大森署長の特異さなど番外編ならではの楽しみがあります。また、前作のその後に起きるキャリア官僚同士の面倒くささも楽しめ、さすがの…

西村健「バスに集う人々」(実業之日本社 2023)

「路線バスシリーズ」最新作で3作目。シリーズものとは知らずに読んだ1冊。 西村健の作品を読むのは「ゆげ福」以来。博多や久留米のラーメン発祥など、細かさを突き詰める物語と探偵物語が合体していた記憶があります。 このシリーズでは、東京都内の路線…

富安陽子「ヌラリヒョン・パパにまかせなさい! ドロロン村のなかまたち」(理論社 2022)

2巻目の「オソロシ山の」を先に読み、シリーズ始まりの訳が書いてある1巻にたどり着きました。 ドロロン村の登場人物、妖怪たちが勢揃いし、楽しく暮らせるようになり、さあこれからいろいろなできごとが待っている!と期待させるに十分はお話。 シリーズ…

森絵都・作 カシワイ・絵「生まれかわりのポオ」(金の星社 2022)

身近にいて大切な命あるものを失ってしまった悲しみや喪失感をどうやって回復させていくのか…そのための一つの方法として、〈愛するものがいつでも側にいる、まわりにいる〉という物語が大切、そのためには物語を作ることが必要、そんな風に読みました。 子…

デビー・リヴィ/文 エリザベス・バドリー/絵 さくまゆみこ/訳「わたしは反対!」(子どもの未来社 2022)

サブタイトルは、「社会を変えたアメリカ最高裁判事 ルース・ベイダー・ギンズバーグ」。 さくまゆみこさん訳。無条件で手に取りました。 第二次世界大戦後のアメリカ社会で理不尽なきまりや不公平があったことを再確認することができました。中には初めて知…

おおぎやなぎちか・作 井上コトリ・絵「へビくん ブランコくん」(アリス館 2022)

友だちになること、遠く離れた友だちを思うこと、友だちに会うために旅すること、友だちに話したいいろいろなこと…〈友だち〉をキーワードにいろいろなことを感じることができます。 理不尽なできごとでブランコに巻つきてしまい、とぐろが溶けなくなってし…

さいとうしのぶ「ホットプレートよーいどん」(白泉社 2023)

言葉遊びやページをたどって遊ぶお話が楽しい作家というイメージを持っています。 子どもに読んであげるのにちょうど良いサイズの小型絵本。ホットプレートに料理の材料が並び一斉に飛び込むと子どもの大好きな食べ物に変身。それぞれの材料の表情が楽しく、…

二宮由紀子・文 国松エリカ・絵「おうちりくじょうグランプリ」(文研出版 2022)

家の中にあるモノが10種競技大会をしたらどうなる?を、〈こんな風に楽しくなる〉と描いた作品。ナンセンスで愉快な文と絶妙の味わいを加える絵…「おうちりくじょう」シリーズでは、この文と絵の組み合わせが毎回新しいおもしろさを生み出しています。 〈…

佐々木譲「樹林の罠」(角川春樹事務所 2022)

「道警・大通警察署」シリーズ最新作。時の変化も盛り込み、チーム全員の個人的な事情も描き、警察小説プラスの要素も含めて読めるシリーズか…と。 佐伯・新宮チーム、津久井・滝本チーム、そして小島の3つのピースがそれぞれの担当する事件・事案から寄り…

二宮由紀子・文 青山友美・絵「おうち すいえいたいかい」(文研出版2022)

二宮由紀子さんは大好きな作家の一人。 「コップのすいえい」のおもしろさは衝撃でした。朝倉世界一・絵と合体して生まれる楽しさは、二宮由紀子さんの言葉・文にマジックをほどこしたような印象がありました。 二宮由紀子さんは絵を担当する作家とタッグを…

富安陽子・作 山村浩二・絵「ヌラリヒョン・パパにまかせなさい オソロシ山のながれ星」(理論社 2022)

大好きな富安陽子さんの作品。「妖怪一家九十九さん」シリーズのヌラリヒョン・パパのお仕事物語。この「ヌラリヒョン・パパにまかせなさい」もシリーズ化しているのは知らず、読むのはこれが初めて。 妖怪と人間が暮らすドロロン村の困りごとを解決するのが…

いとうひろし「バンバンバンバンバンソウコウ」(ポプラ社 2023)

言葉の響き、弾むようなリズム、声に出しやすい言葉、声に出して読みたい、元気になれる作品。 文を覚えたら次は文と絵を合わせて隅々まで楽しみ、ごっこ遊びまでできそう。 久しぶりのいとういろしさんの作品は、気持ちよくなれ、心のリフレッシュになれま…

野地秩嘉「高倉健 沈黙の演技」(プレジデント社 2022)

唯一無二の映画スター・高倉健の演技を数多くの関係者による証言、その証言を引き出した著者の力量によって、タイトルの〈沈黙の演技〉が何なのかを明らかにしています。何も言うことなしの読んで楽しめる作品。 個人的に面白かったのは、「映画の演技とは反…

なかがわちひろ「やまの動物病院」(徳間書店 2022)

なんとも楽しいお話。山のふもとの小さな町の外れにある動物病院のステキなお話です。 昼間は〈まちの先生〉がお医者さんの動物病院。でも患者の動物はめったにきません。 でも夜になると、同居するトラネコの〈とらまる先生〉が山やふもとの動物たちを相手…

小手毬るい「ごはん食べにおいでよ」(講談社 2022)

著者が好きな題材で、好きなこと、好きなものをふんだんに取り入れ、いたるところに散りばめた物語か…と。 「開店の日はりんごの木の下で」から始まり、後は曜日に絡めた章立てで物語が進んでいきます。この最初の章がうまく頭の中で整理できず、ちょっと手…

シーナ&ザ・ロケッツ「ピンナップ・ベイビー・ブルース」(1981)

鮎川誠氏が亡くなったとのニュース。訃報欄ではどういうわけか〈ギタリスト〉としてばかり紹介されている。〈ロッカー〉だったら一発で表現できるのにと思う。 唯一持っているレコード「Pin-up Baby Blues」をレコーダーで聴きながら散歩。 硬質で太い音のギ…