湯本香樹実・文 酒井駒子・絵「橋の上で」(河出書房新社 2022)
とってもイヤなことがあって、橋の上から川を見ている少年のざわつく気持ちが短い文からピリリと感じられます。
イヤなことから逃れるためにひょいと飛び越えてしまいそうになる危うい心を静めるためには、そんな気持ちを知り生き延びたおとなの存在が必要なのかも。
この絵本では雪柄のセーターを着たおじさんがその役で、〈君だけのみずうみ〉の存在をぼくに語ります。
この〈君だけのみずうみ〉はおとなになったぼくにとって、その後も気持ちがふさいで眠れない夜には灯のように心を落ち着かせてくれます。
酒井駒子さん独特の絵、色づかいの変化も含めてが少年の気持ちを細やかに表しています。家に戻ったとき、湖のまわりの水辺のシーンは特にそう。
子どもが危ういところから抜け出すためには、きっかけと気持ちを持続させる何かが必要で、それは目配りできる誰かが必要…。