読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

斉藤洋「翔の四季 秋 黒と白のあいだで」(講談社 2022)

「翔の四季」シリーズ2作目。前作「翔の四季 夏 かげろうのむこうで」は2021年、偕成社から出版。翔の友だち・涼は普通の人には見えないものが見える能力があります。翔は涼の〈見える・見えない〉を通して、人やものごとには見方によって見え方・事の本質が違うことをなんとはなしに感じていきます。

今作では、翔自身が〈聞こえていること・聞こえていないこと〉を体験し、〈聞こえていないこと〉の裏・奥にあることに気づかされ、その意味を考え始めます。

このシリーズでは翔の父親がけっこう大事な役割を果たし、今作ではタイトルも父親の言葉が被さっています。翔と涼が翔の両親や教員、ジャーナリストらおとなたちとの関わり方が自然…とてもしっくりとしていていいなと思うばかり。

作中起きる事件を解決することと涼の大事な人を守るために、翔が獲得した〈聞こえないはずのことが聞こえる〉力と涼が決めた終わらせ方がタイトルそのものを意味しているように思えます。

斉藤洋さんの物語は、時代を映す問題提起型ではないので、古い作品でも色あせない魅力があります。

涼の〈見える・見えない〉、翔の〈聞こえていること・聞こえていないこと〉を経て、次回作は何が待っているのか楽しみ。

「黒と白のあいだで」