村中季衣「奉還町ラプソディ」(BL出版 2022)
アーケードのある古びた商店街が物語の舞台。大政奉還によって武士の時代が終わり、殿様が武士に奉還金を配り、そのお金で商店街が生まれたという歴史だけはあるレトロな商店街。
物語を進めるのは、この商店街の近くに引っ越してきたぼく・さとしと家がまんじゅう屋をしている同級生のあつし。
そしえ、本当の主人公は、この商店街の人たち。皆高齢ながら店を守り、営み、現代を生きています。
収められている6つの物語は、商店街の名物ともいえる人たちが生きてきた歴史そのものとさとし&あつしがという現代の子どもが交わることで生まれるふしぎでじんわり温かさに満ちています。
さとし&あつしが何を感じたのかは描かれていませんが、一つひとつの物語が展開していくうちに関わり方に変化が生まれ…最後はいい物語を読んだといううれしさに包まれます。
物語の情景を映し出し、イメージをふくらませるような絵がピッタリ。最後はとても印象的。
お話づくりのベテラン作家が生み出した魔法のような物語。