読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

小手毬るい「お母ちゃんの鬼退治」(偕成社 2022)

作家・小手毬るいさんが、母親を、母親と自分を、母親を支える父親を、作家になりたかった自分を綴った作品。作者・子どもと母親・おかあちゃんとの距離がテーマの一つになっていて、かなりシビアであったのにも関わらず文はどこか温かい、これが2人の関係そのものなのかも…。

年を重ねて視力を失っていくお母ちゃんが手放してきたことや諦めたこと、反対にチャレンジャーとして獲得していくプラスのエネルギーは、今の作者だから書けるお母ちゃんの姿だと感じた次第。

「十八歳で家出」の章には、

家族ってなんだろう。

親子ってなんだろう。

この問いかけに対して、あなたはどう応えますか。

わたしは、こう答えます。

一度はそこから、離れていかなくてはならないもの。

一度はみずから、断ち切らなくてはならないもの。」と書いています。

この文が、この本全体を貫いていく言葉になっているように思う。

他に、作者の夫が作者と母親との得がたい緩衝材になっていること、父親の描いたさし絵のうまいこと、何よりも「障害」を考える視点がすばらしい。

「障害とは、友に生きていくもの。…今は障害のある人、今は障害のない人、両方が〈普通の人〉〈健常な人〉として、肩を並べて生きる社会。それこそが多様性と豊かさのある、真の意味での、平等で自由な社会ではないかと、わたしはきょうも考えている」はうなずくばかり。そして、障がい者をチャレンジャーと呼ぶ言い方もステキだと思う。

お母ちゃんの〈鬼〉を探すのも楽しい。

「お母ちゃんの鬼退治」