読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

濱野京子「空と大地に出会う夏」(くもん出版 2022)

〈さりげなく〉が詰まっている物語。

何ごとも合理的に考え、寄り道思考をしない小6のぼく・理一郎が、普段ならつきあう接点もない、ウマが合う訳のない〈海空良:みそら・大智:ひろと・亜梨子:ありす〉たちと出会い、〈自分にはない何か〉を感じ取る物語。

この物語には、〈あいまいさ〉を基準にするとタイプが違う登場人物がたくさんいます。明確な思考回路の姉と情緒的な感覚の妹、タイプの違うぼくと姉、姉と両親、黒い服ばかり着て、スカートなしでも良い私立中学を目指す亜梨子、ものおじせず誰とでも話せ、関心のあることには進んでチャレンジする海空良、自分のスピードで自ら確認せずにはいられない大智、そして海空良・大智・亜梨子3人の家族のあり方も…それぞれの違いを〈さりげなく〉物語の中に散りばめ、ぼくは戸惑いつつも化学反応を起こします。

問題を提起する訳でもなく、ジェットコースターのような波乱に満ちた展開でもなく、子どもたちの日常を描いていますが、読んだ後には〈ぼく〉と同じように〈当たり前や違いの何か〉をさりげなく感じるのでは…。

タイトルは、子どもたちの未来の広がりをイメージしています。

「空と大地に出会う夏」