読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

海老沢泰久「無用庵隠居修行」(文藝春秋 2008)

テレビでこのシリーズを観て原作を読んだ次第。

テレビと原作はかなりの違いがあるが、どちらもおもしろさは同じ。

同じ〈隠居〉でも、藤沢周平の「三屋清左衛門残日録」が藩の政治に巻き込まれながら身辺で起きる事件と関わりのある人々との人情の機微に触れているが、それとは趣が異なり、人の死がありながらもどこか明るさを感じる。若い侍が衝動を抑えられずに刃傷沙汰を起こして死んだり、悪事を働く者によって子どもが簡単に殺されたりするが、主人公の奔走によって事件を解決させながら、亡くなった者の無念さよりも解決したことによる明るさを感じる…何ともふしぎな心地がする物語。

「無用庵隠居修行」