太田和彦「人生、油揚がある」(亜紀書房 2022)
〈はじめに〉で著者が付けたタイトルへの思いを感じながら読み始める。
思いつくままにさまざまなジャンルのエッセイが並ぶので、読み手も感じるままに拾い読み。
その中からいくつか感じたことなど。
「三」という数字が好きなことから三題噺のように続く「ラッキーナンバー」「日本三大あれこれ」「三人娘」は、話題があちこちに飛びながら著者の思いやうんちくをたのしめる文。
昭和30年代の信州での大晦日から正月にかけての家族風景を綴った「子供のころの正月」は味わいがある。大晦日におせち料理を並べる風習は、北海道とも通じ、〈年とり〉を大事にする共通性に判る判る。
「あたためますよ」で触れて売る〈日本酒のブランド主義が消え、日常で長く楽しめて飽きないものこそ本物〉という私的はまさにその通り、「本当の実力酒を安いのから見つけ…まことに健全」も然り。