読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

「沖縄発 沖縄の新聞記者」(高文研 2022)

琉球新聞社の記者が書いたコラムをまとめた本。6章あり、いくつかを拾い読み。

第1章の「沖縄と政治」は、沖縄の新聞記者でしか書けない視点のコラムが6本。尾長知事の病状をめぐる4ヶ月の動きを書いた「情報飛び交った体調報道」「最後の大立ち回りと〈ペンの出番〉」は、県民の気持ちや記者としてのためらい、決意、国との基本的な感覚の違いを読みやすい文にまとめ、読者に考えることを託している。

第2章の「さよならボーイズクラブ」は、沖縄だけではなく現代社会の大事なテーマを扱っている。〈多くの組織で長い間、男性が意思決定や情報の流通を支配してきた…男性同士のホモソーシャルなネットワークを指す「ボーイズクラブ」〉を取り上げ、「女性力キャンペーン報道と、記者の現在地」「女性力報道、二つの裏テーマ」のシリーズコラムは、沖縄の現状とどうしたら?という問いかけが身近に感じられた。琉球新報連載の4コママンガの作者が登場人物の描き方を見直したというエピソードや那覇市議会選挙で定数40の中、女性候補13人当選という状況の変化など状況の変化につながる可能性を課飽いているのが嬉しい。

第3章の「沖縄戦〈展示変更問題〉とは何だったのか」は、このコラムで初めて知ったこと。2017年、沖縄県平和記念資料館が新しい資料館に移行する段階で、県知事・県庁が秘密裏に県民の意向とは無関係に展示内容を大幅に変更しようとしたことを指している。「ガマでの惨劇」と題する展示で、沖縄戦で実際に起きた日本兵による避難壕での住民虐殺や壕追い出しの事実をないものにしてしまう内容。

琉球新報の取材と報道をきっかけに沖縄の人たちの大きな怒りと声となり、展示変更が撤回された経緯を、書いた記者の子どもが資料館を見学したその後を加えることで、資料館の展示が現在につながっていることを示していた。

第6章の「大城立裕さんの首里城普天間 十月忌 見えなくてもそこにある」は、2019年に亡くなった沖縄の作家。大城立裕さんが作詞した那覇市立城西小学校校歌を下敷きに、大城立裕さんが大事にしていた沖縄のアイデンティティーをまとめたもの。日本の地方に暮らすものにとっては、納得感のあるコラム。

「沖縄発 記者コラム 沖縄の新聞記者」