読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

いろいろな本

なかがわちひろ・作「天使のかいかた」(理論社 2002)

20年ほど前の作品。作者の絵はどの作品も古びない魅力があります。柔らかで温かな線で描くいろいろな子どもたちが互い互いの言葉で物語に加わっているのは、いつの世にも通じる力があります。 主人公の女の子・さちの友だち5人はそれぞれペットを飼ってい…

なかがわちひろ・作「おとな体験授業?」(アリス館 2023)

作者は「色」を使うのがとてもうまいなといつも思っています。 特別授業で先生が〈グループごとに自分がどんなおとなになりたいのか話し合い、決まったら紙に書いて沸騰したビーカーのお湯の中に入れて〉と指示します。するともわもわした湯気が広がって…5…

サラ・オレアリー:作 チィン・レン:絵「じぶんのきもち みんなのきもち」(あかね書房 2022)

〈何で私の気持ちがマイナスになるようなことを訊いてくるのだろう?〉という子どもたちの気持ちをいくつも挙げ、子どもたちの気持ちに寄り添っています。「どうして本ばかりなど読んでるの?」「どこの国の人ですか?」「何でいつも同じシャツ?」…訊かれた…

斉藤洋・作 高畠純・絵「ペンギンたんけんたい みなみのしま」(講談社 2022)

1991年から始まった「ペンギン・シリーズ」の最新刊は絵本バージョンで、ペンギンの数は50羽からぐんと少なく10羽。 50羽を数えるのが楽しみの1つですが、ここではペンギンたんけんたいが目指す場所と何をしようとしているかがミソ。 最初から最…

飯野和好・作「ぼくとお山と羊のセーター」(偕成社 2022)

昭和20年代後半から30年代にかけて、山の中の農村家族の暮らしが詰まっている絵本。 傾斜地でお茶を栽培し、養蚕を営み、牛、羊、ウサギ、ニワトリを飼い、家族で働く農家のありようと、子どももできる農作業を手伝うのが当たり前…エネルギーにあふれて…

河田桟・作「ウマと話すための7つのひみつ」(偕成社 2022)

作者は、奥付のページで自己紹介をしています。日本の南端・与那国島で馬と暮らし、馬とコミュニケーションを取って暮らしていることなどなど。 最初に、〈ウマを見ると、なんだあうれしくなって、にこにこわらってしまう〉〈ウマたちのようすを いつまでも…

クリハラタカシ・作「きょうのコロンペク コロンペクの1しゅうかん」(福音館書店 2023)

独特の絵、言葉をおもしろがって楽しむのみ。 ふしぎな形のコロンペクが遊び・散歩に出かけて、あれれとびっくりするような体験をし、家に帰って両親にちょっとした心地を出す…その繰り返しですが、読んでいて「へーっ」と驚く新鮮な発見もあったり、そうく…

如月かずさ「給食アンサンブル2」(光村図書 2022)

前作「給食アンサンブル」同様、学校という狭い世界のまた独特な「給食」を題材に、中学生たちにとって切実なことを6つの短編集で描き、それぞれが連動し合う作品。 前作では、キャラクターの自演、演出などがけっこう大事なことでしたが、今作ではクラブ活…

マイケル・モーパーゴ:作 ベンジー・デイヴィス:絵「パフィン島の灯台守」(評論社 2023)

マイケル・モーパーゴの作品を読むのは初めて。知ってはいたけれど、手に取るのはちょっと面倒…そんな印象の作家でした。 個人的には好みの物語。嵐の夜、乗っていた船が座礁したところを灯台守のベンに助けられた少年・アランが、一夜を過ごした灯台でので…

イブ・タイタス:作 ポール・ガルドン:絵「アナトールとねこ」(好学社 2022)

オリジナルは半世紀以上前の古典的な作品。訳は石津ちひろさん。 チーズ工場の味見係のねずみ・アナトールが天敵のネコからどうやって身を守り、味見係をまっとうするのか…チーズがどれだけ大切な食材になっているのか、さすがはフランスの物語と感じてしま…

なかがわちひろ・作「めいちゃんの500円玉」(アリス館 2015)

表紙の絵はとてもインパクトがあり、どんな話がまっているのだろう?という気持ちになります。 ピアノ教室の帰り道でめいちゃんが拾った500円玉が思わぬ物語になっていきます。 主人公のめいちゃんと500円玉、そしてめいちゃんが関わり合う人たちだけ…

おくやまゆか・作「もじゃもじゃドライブ」(福音館書店 2023)

これまでのマイカーを乗り換えた主人公家族の中古の自動車が走っているうちに勝手に方向を決め、おまけに毛むくじゃらになってしまう…毛むくじゃらには訳があり、家族の愛情があり、それでいて突拍子もない変化が当たり前のように感じてしまう楽しいお話。毛…

なかがわちひろ・作「すてきなひとりぼっち」(のら書店 2021)

主人公のぼくが道で拾ったカメと一緒に体験する人ごみや街中での〈ひとりぼっち〉を、ぼくの視点とぼくに関わってくる人々を描写し、ぼくが感じる〈ひとりぼっちのステキさ〉がさりげなく伝わってきます。 作者はシンプルで柔らかな絵とともに、色の使い方が…

北中正和「ボブ・ディラン」(新潮新書 2023)

DVD「ノー・ディレクション・ホーム」を観ながらセットで読みました。 文章がこなれていて、数多くのデータやエピソードが文に馴染んでいるので、熱心なファンでもない私もなるほどとうなずきながら読みました。 ボブ・ディランが古いブルースやフォーク…

眞島めいり「バスを降りたら」(PHP2023)

お気に入りの作家の3作目。登場人物の書き分けがうまく、それぞれの語りも繊細、人物ばかりではなく周囲の細々とした描き方をおろそかにしていないので、場面が伝わってきます。 1作ごとに文章の表情を変え、新鮮さがあります。 この物語は、中学生の女の…

羽仁進・作 堀内誠一・絵「ぼくにはひみつがあります」(主婦の友社 2023)

1973年刊行の復刻版。 よく復刻したなと思うとともに、羽仁進さんの文と堀内誠一さんの絵に触れるうれしさが優ります。 最初のページでする主人公の紹介がとてもうまい。〈ぼくの得意なことととびっきりの秘密を持っていること〉、次のページからは一気…

佐川光晴「猫にならって」(実業之日本社 2023)

猫のけなげな出産・育児が物語の進行役を務めるミカズに生きる気力を与え、そのことが回り回って幾人もの人生の岐路に猫が現れ、ミカズとその源となる猫が羅針盤のように行き先を助言してくれる…まわりくどくいうとそんな印象の連作物語。 どの物語も最後に…

石川宏千花・作「保健室には魔女が必要」(偕成社 2022)

作者の作品を読むのは、「拝啓パンクスノットデッドさま」に続いて2冊目。 「拝啓パンクスノットデッドさま」は、パンクロックをキーワードに、生きていくためには音楽が絶対に必要…2人の兄弟、兄弟を支えるおとなたちの言葉やスタイルが強烈でした。クラ…

ポール・ハーブリッジ/文 マット・ジェームス/絵「つきよのアイスホッケー」(福音館書店 2023)

カナダの子どもたちにとって冬のスポーツはアイスホッケー。そのことがビシビシ伝わってくる絵本です。 森の中にある大きな池が2月になり、マイナス20度の日が続いて一面氷が張ります。村の子どもたちはその池でアイスホッケーをするのが待ち遠しくてたま…

岸田衿子・作 堀内誠一・絵「いかだは ぴしゃぴしゃ」(福音館書店 1987)

かなり古い絵本だけれども、おもしろさと絵は今もそのまま通用します。 子ぐまがお弁当を持っていかだで川を下り、途中でたくさんの動物を乗せて海辺でお弁当をみんなで食べる…いかだに乗る条件はお弁当を持っていること、ページをめくるたびに動物が増え、…

志津栄子・作 くまおり純・絵「雪の日にライオンを見に行く」(講談社 2023)

「ちゅうでん児童文学賞大賞」受賞作。審査員の斉藤洋。富安陽子両氏が選んだ作品なので、この文学賞受賞作は必ず読んでいる。 日本にやってきた中国残留孤児3世の唯人は、父親が日本に居場所を見つけられないまま中国に帰ってしまい、大阪で母親と2人暮ら…

香桃もこ・作 岡田よしたか・絵「イカにんじゅつ道場 ただいま弟子ぼしゅうちゅう」(福音館書店 2022)

とぼけた味でちょっとシュールで好きな作品。 〈食べ物〉を題材に愉快なお話を創っている岡田よしたかさんの絵が楽しい。 イカの忍者が道場を開き、弟子を募集。忍術を学びにやってくる魚やカニ、くらげに術を教えながらも、おいしそうなのでパクリ…。 とん…

谷川俊太郎・作 堀内誠一・絵「あっはっは」(くもん出版 2009)

少し古い作品。左のページに悲しそうな表情の女の子。右のページには〈あっはっは〉と笑う男の子。ラフな太い線でさっと描いたような絵がとても新鮮・斬新なデザイン。ページをめくっても男の子の〈いひひ〉〈うふん〉と笑い声が変わり、それに反応して女の…

プリシラ&オットー・フリードリック/文 ルイス・スロボドキン/絵「マシュマロおばけ」(瑞雲舎 2022)

半世紀以上前の作品。手抜きのようでどこか味のある、親しみの持てる絵のルイス・スロボドキンの作品。 アイルランドからアメリカに渡ってきたエスターおばさんと3人(?)の子どもおばけが楽しみ、騒ぎを巻きおこす楽しい物語。 タイトルのマシュマロがハ…

斉藤洋・作 いとうあつき・絵「こえてくる者たち 翔の四季」(講談社 2022)

シリーズの夏・秋を過ぎて冬を迎える3作目。タイトルの「こえてくる者たち」の意味を考えてしまう作品。 見えないものが見えてしまう涼、聞こえない声が聞こえてしまう翔は、普通に考えれば「普通の人を越えて・超えてしまった人」なのかと思うけれど、一方…

おおぎやなぎちか・作 イシヤマアズサ・絵「俳句ステップ」(佼成出版社 2020)

小学校の国語で〈俳句〉の授業があるせいか、〈俳句〉を題材にした児童物語が多くなってきているように感じます。 この物語では、自分に自信のない小3の女の子がひょんなことから出会ったおばあさんから俳句を教わり、自分が見たこと、感じたことを五七五の…

漆原智良・作 やまなかももこ・絵「じいちゃんの島は宝島」(フレーベル館 2022)

作者最後の作品。今の時代には少ない気持ちよく読める物語。 小学校4年生・悠斗の家に定年で仕事をやめたおじいちゃんが同居するようになり、それまで家にいたお母さんが働きに出るようになり、帰宅後はおじいちゃんとの留守番が日常に…。お母さんは、「…な…

今野敏「審議官 隠蔽捜査9.5」(新潮社 2023)

人気シリーズのスピンオフ集。主人公・竜崎の家族それぞれの推理や正義をめぐる物語や異動前の大森署の竜崎ロス、新しい大森署長の特異さなど番外編ならではの楽しみがあります。また、前作のその後に起きるキャリア官僚同士の面倒くささも楽しめ、さすがの…

西村健「バスに集う人々」(実業之日本社 2023)

「路線バスシリーズ」最新作で3作目。シリーズものとは知らずに読んだ1冊。 西村健の作品を読むのは「ゆげ福」以来。博多や久留米のラーメン発祥など、細かさを突き詰める物語と探偵物語が合体していた記憶があります。 このシリーズでは、東京都内の路線…

富安陽子「ヌラリヒョン・パパにまかせなさい! ドロロン村のなかまたち」(理論社 2022)

2巻目の「オソロシ山の」を先に読み、シリーズ始まりの訳が書いてある1巻にたどり着きました。 ドロロン村の登場人物、妖怪たちが勢揃いし、楽しく暮らせるようになり、さあこれからいろいろなできごとが待っている!と期待させるに十分はお話。 シリーズ…