読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

なかがわちひろ・作「おとな体験授業?」(アリス館 2023)

作者は「色」を使うのがとてもうまいなといつも思っています。

特別授業で先生が〈グループごとに自分がどんなおとなになりたいのか話し合い、決まったら紙に書いて沸騰したビーカーのお湯の中に入れて〉と指示します。するともわもわした湯気が広がって…5人の子どもたちは自分がなりたい職業の体験をするはずなのですが、ここからが作者の腕の見せどころ。

5人の子どもたちはこんなはずじゃなかったと思う反面、思ってもみなかった感覚やまわりの人たちの反応を見て〈おとなになっていくことの自由さ、可能性〉を体験します。

子どもたち一人ひとりに色を付け、おとなたちの中に紛れ込んでも誰の物語なのか見て分かるようにしているので、お話を文と絵の進み具合で楽しむことができます。一人だけなりたい自分を書けなかった子もちゃんと自分を見つけられる仕掛けがあり、読み手の子どもたちに安心感を与えています。

読んだ後で表表紙と裏表紙を見ると、お話のおまけと余韻を楽しめます。

「おとな体験授業?」