志津栄子・作 くまおり純・絵「雪の日にライオンを見に行く」(講談社 2023)
「ちゅうでん児童文学賞大賞」受賞作。審査員の斉藤洋。富安陽子両氏が選んだ作品なので、この文学賞受賞作は必ず読んでいる。
日本にやってきた中国残留孤児3世の唯人は、父親が日本に居場所を見つけられないまま中国に帰ってしまい、大阪で母親と2人暮らし。アズは、両親が別居し金沢から大阪へ越してきて母親と2人暮らし。
唯人は自分に自信がなく、自分の考えを周りに言うことが不得手。アズも人との距離感を美味く穫れず、自分の考えを押さえつけ、たまってしまうとバクハツ。
子どもたちが繰り出す関西弁のノリが〈コミュニケーションの成立ときわどさ〉を演出し、対比するようにアズのモヤモヤ、苛立ち、孤立感を描いているよう。
作者が〈あとがき〉で、「人とどうかかわったらいいのか、わからなくなる…」子どもたちと、ありのままを出し合える仲間、友だちの存在を関西弁のノリがうまい具合に支え役にもなっている…現代的で深刻なテーマを扱いながら明るさと前に進んでいく子どもたちの力を感じられ、すなおにいいなと思える作品。