眞島めいり「バスを降りたら」(PHP2023)
お気に入りの作家の3作目。登場人物の書き分けがうまく、それぞれの語りも繊細、人物ばかりではなく周囲の細々とした描き方をおろそかにしていないので、場面が伝わってきます。
1作ごとに文章の表情を変え、新鮮さがあります。
この物語は、中学生の女の子と男の子が章ごとに自分語りで展開していきます。
受験の失敗、今いる自分は仮の姿、居場所を見つけられない…だから変にこだわりを持っている律。
家庭教師をしてくれているおとなの女性を通して想像する力を学ぶ、近くの美術館の鳥の絵に心が落ち着く、めがねを付け始めて見える世界が変わる…自分に足りない何かを感じる奈鶴。
2人はバスを介してお互いを意識しながら、互いのふとしたできごとに接しながらそれぞれの捜し物を見つけます。
ビックリするようなエピソードはなく、静かで揺れ動きながら2人の気持ちが綴られ、2人ともモヤモヤとしたわだかまりや何か足りないと思っていたことを見つけ…言葉や意識というあやふやなことがすんなりと入ってきます。