読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

石川宏千花・作「保健室には魔女が必要」(偕成社 2022)

作者の作品を読むのは、「拝啓パンクスノットデッドさま」に続いて2冊目。

「拝啓パンクスノットデッドさま」は、パンクロックをキーワードに、生きていくためには音楽が絶対に必要…2人の兄弟、兄弟を支えるおとなたちの言葉やスタイルが強烈でした。クラッシュやラモーンズといったパンクバンドの心が現代に生きているなんて何とまあステキなことか。

母親のネグレクト、兄弟2人で生きていくためにはさほどに強烈なエネルギーを発するパンクが必要だってこと…2人のバンド〈60の子〉のステージを果たした晴己が語る〈オレたちは本当に、これからどんなふうにでも生きられるし、どこにでも行けるんだ〉という言葉はとても印象的。

「保健室…」はさらっと読める雰囲気を漂わせながら、中高生にとっては〈敏感に反応してしまうあれこれ〉を6つの短い物語に潜ませています。

主人公は中学校の保健室の先生をしている魔女。魔女の世界で「七魔女決定戦」に参戦している彼女は、自ら考案する「効果のあるおまじない」を流通させることが七魔女の空きポストに就く道。

物語は保健室にやってくる生徒の悩みを聞きながら、彼ら・彼女たちに寄り添う「おまじない」を考えだし…その悩ましさが現代の中学生そのもの。

ライバルの魔女とのふしぎな友だち感覚、魔女ゆえに人間の奥底が分かること、反対にわかりにくいこと、あれこれが混ざり合いながら最後にはタイトルの「保健室には魔女が必要」に結びついています。

最初は、「保健室には魔女がなぜ必要?」と思いながら読むと思うので、最後まで読んですとんと納得できます。

他の作品も読んで見なければと思う作家の一人になりました。

「保健室には魔女が必要」