読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

北中正和「ボブ・ディラン」(新潮新書 2023)

DVD「ノー・ディレクション・ホーム」を観ながらセットで読みました。

文章がこなれていて、数多くのデータやエピソードが文に馴染んでいるので、熱心なファンでもない私もなるほどとうなずきながら読みました。

ボブ・ディランが古いブルースやフォーク・ミュージックを拾い上げ、それらの歌い手を敬愛して新しく蘇られていたことやアコースティックからエレキサウンドに転向した頃のバッシングは、映像と文を読み合わせると当時をうまく頭の中で整理することができました。

昨日、散歩しながらMP3プレーヤーで聴いたディランの初期ベストレコードの曲の中に、ニッティ・グリッティ・ダート・バンドの曲だと思っていた「YOU AIN'T  GOIN' NOWHERE」があり、ちょっとビックリ。

「見張り塔からずっと」もジミ・ヘンドリックスU2だけを聴いていたら彼らの曲かと思うかも…と思うほどオリジナルよりずっとできがいい曲になっています。

ボブ・ディランの曲は、本人が時代とともに変えているように、感じ取るアーティストによってアレンジできる幅がある、そう思います。そして、この新書を読むとますますその感が強くなりました。

〈おわりに〉で、この本はボブ・ディランの入門書だと書いています。

「ローリング・サンダー・レビュー」あたりまでしか聴いていない自分にとっては、これd十分なのですが、もう少しボブ・ディランに近づいてみてもいいのかなとはちょっと感じました。

何十年も前、NHKのテレビだったと思いますが、「ローリング・サンダー・レビュー」の映像を見た記憶がありますが、果たして本当だったのかどうか。

きょう、ウェブで興味深い記事を読みました。来日中のジャクソン・ブラウンに音楽評論家の天辰保文さんがインタビューしたもので、記事から抜粋して紹介します。

ジャクソン・ブラウンとともに時代を生きてきた人ならではのインタビュー。

n(新型コロナウィルスによる)「パンデミックを通じて、改めて「For Everyman(73年)」や「Before The Deluge(74年)」のような歌が、新しい価値というか、意味のある歌として響いてくるような気がしますね」という問いに対するジャクソン・ブラウンの答え。

「…曲というのは、アップデートが可能だと思っている。それが、フォーク・ミュージックの伝統だからね。つまり、既にあるフォークソングのコンテンポラリーなバージョンを書く、もしくは自分に合うように歌詞を変え、パーソナルな物語として生き返らせる。」これって、この「ボブ・ディラン」の言葉と重なるように感じました。

 

      「ボブ・ディラン

「ノー・ディレクション・ホーム」