読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

漆原智良・作 やまなかももこ・絵「じいちゃんの島は宝島」(フレーベル館 2022)

作者最後の作品。今の時代には少ない気持ちよく読める物語。

小学校4年生・悠斗の家に定年で仕事をやめたおじいちゃんが同居するようになり、それまで家にいたお母さんが働きに出るようになり、帰宅後はおじいちゃんとの留守番が日常に…。お母さんは、「…なさい」と命令調だけれど、おじいちゃんは自分で考え、自分で決めるような言い方。そんな言葉に甘えた悠斗はついついなまけてしまい、何をしてもうまくいかない。いつしかふて腐るようにも…。

留守番のあいだにおじいちゃんは子ども時代を過ごした今は無人島になってしまったふるさとのミドリ子島の思い出話を楽しそうに悠斗に話す。いつしか悠斗はミドリ子島を宝島のように思い浮かべてしまう。

物語は、その無人島でおじいちゃんと悠斗が過ごす夏休みの4日間。おじいちゃんの言葉や悠斗が体験する島でのできごと…タイトルの〈宝島〉って何だろう?を悠斗が見つける、感じる物語。今は無人島で、そこに住んでいた人たちの痕跡だけが残っている島で悠斗が感じた宝は、案外に現代のテーマに結びつく大事なこと、作者が伝えたかった思いがおじいちゃんを通してさりげなく語りかけてきます。

安心して読める物語っていいな…と。

「じいちゃんの島は宝島」