読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

小田嶋隆「上を向いてアルコール」(ミシマ社 2018)

先月亡くなった小田嶋隆さんの著作をちょっとずつ図書館から借りて読んでいる。

若い頃、「噂の真相」を定期購読していた時に小田嶋隆さんのコラムを読み、辛辣だけれど遊びもあり、うまい文を書く人だなと思って読んでいた。

今回は「上を向いてアルコール」。断酒して20年を経て、「まず、飲んじゃったが先にある」で始まる「アル中に理由なし」の1日目から「アルコール依存症に代わる新たな脅威」で終わる8日目まで読んでうなずく告白集。

6日目「飲まない生活」と「告白を終えて」の両方に書いている「4LDKの2部屋に暮らしているような寂しさ」が印象的。文を引用すると「…厄介なものは全部、住んでいないほうの2部屋に押し込んで、残りの片付いた2部屋で暮らす生活は、それでとりあえず快適ではあるわけです。でもって、閉ざされた部屋については、ふだんはなかったことにしている。〈失ったものについて深く考えない〉ということが、おそらくアルコールからなるべく穏当に撤退するうえでの秘訣になっている…」。

そのためには、「酒がない人生を一から組み直す」ことが大切で、医師から「…酒をやめるためには、酒に関わっていた生活を意識的に組み替えること。それは決意とか忍耐の問題ではなくて、生活のプランニングを一からすべて組み替えるということ」と伝えられ、「…実際やってみると…酒がない人生を一から設計し直す作業は…えらく人工的な営為」と綴っています。ふーん、そうなのかです。

もう一つなるほどと思ったことは、「8日目アルコール依存症に代わる新たな脅威」の章で「コミュニケーション依存」を挙げていること。

小田嶋隆「上を向いてアルコール」