読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

宮部みゆき「子宝船 きたきた捕物帖二」(PHP 2022)

大満足の物語。前作同様、表紙の装丁がお見事。三木謙次氏の絵も味があり、物語の雰囲気を伝えています。

北一と喜多次との距離が縮まり、コンビに近づいていく感触が最後の場面にあふれています。

喜多次が自然と自分のことを少しずつ明かし、北一が周りから叱咤激励を受け、あと何冊かしたら二人とも一人前になるんだなと予感させてくれます。そして、茂七・政五郎・千吉と続く名岡っ引きのいいところを引き継ぎながら、今までの岡っ引きとは違う捕り物に北一と喜多次のコンビがなっていく序章のような作品か…と。

また、北一が人と出会い、その出会いから預けられた宿題を千吉親分やおかみさんの言葉を思い出しながらきちんとやり遂げ、ちっぽけな自分だけれどもう少し何かができる…読み手が応援したくなる物語でもあるかな…と。

久しぶりのおでこさんが登場し、弓之助のその後を語り、時代を経ながら宮部みゆき作品が本所深川という場所でつながりあっていることを感じ、読み手としてはウレシイ限り。

どんな風にシリーズ全体が転がっていくのか楽しみばかり。特に、喜多次がどの段階で北一の周りの人たちに溶け込んでいくのか…これから毎年の楽しみ。

宮部みゆき「子宝船」