金城実「沖縄を彫る」(現代書館 1987)
NHK・BSアーカイブ「沖縄は我が念仏」を観て思い立ち、道立図書館から借りて読む。
「残波大獅子」「長崎平和の母子像」「チビチリガマ世代を結ぶ平和の像」、3つの像を制作する過程や氏の思想を講演録を含め、文で書き表したもの。
当時大阪に住んでいた氏と山内徳信氏との決定的な出会いが読谷村との生涯にわたる関わりとなり、住民と一体となった創作、完成に結びついたことが激しさを伴う文から伝わってくる。読谷村でしか実現できなかったことも分かる。
それぞれの制作過程で地域住民を巻き込んでいくドラマのようなエピソードは迫力があり、そこまでしなければできない世界を垣間見る思い。
おおらかな「残波大獅子」に比して、「チビチリガマ世代を結ぶ平和の像」は、内容が過酷でなかなかページが進まなかった。
最後の章で沖縄の若い美術教師との対話が収められているが、2人の食い違う感覚だったものが、次第に美術教師の言葉が変わり、金城氏の世界に入り込んでいくさまがおもしろい。