神戸遙真「笹森くんのスカート」(講談社 )
作草高校の2学期の始まり。1年生の笹森くんがスカートの制服で教室に現れます。ここからクラスメイトのそれぞれの物語も始まります。
この作品は、クラスメイト5人が語る5つの章に分かれ、笹森くんがちょっとずつ関わりながら、それぞれの章の5人がちょっとずつ変化、前に踏み出そうとするところが魅力。
物語に登場するクラスメイトは笹森くんを含めてごく普通の高校生。自分の体質が気になる子、グループが苦手な子、ステレオタイプでクラスメイトを理解する子、容姿を変えたいと思いつつできない子、かわいいから逃れている子、デリカシーがないから人を傷つけてしまうと思っている子…。
自分が周りの人をどう見ているのか、自分が周りからどう見られているのか〈気になる自分〉の厄介さも現実的、家庭や家族のあり方や問題もそれぞれ違いながらもあり、〈今〉が盛りだくさん。
高校生なら自分の気持ちに置き換えて読める要素がいっぱい詰まっています。
タイトルに込められた物語のラストには、笹森くんをはじめ、それぞれの章に関わった子どもたちがスッキリするわけではないけれど、一歩を踏み出す心地よさがあります。