読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

デビー・リヴィ/文 エリザベス・バドリー/絵 さくまゆみこ/訳「わたしは反対!」(子どもの未来社 2022)

サブタイトルは、「社会を変えたアメリ最高裁判事 ルース・ベイダー・ギンズバーグ」。

さくまゆみこさん訳。無条件で手に取りました。

第二次世界大戦後のアメリカ社会で理不尽なきまりや不公平があったことを再確認することができました。中には初めて知ったことも。

 例えば、小学校では右手で文字を書くこと…これは意外な驚き。男女で工作と家庭科・料理が分かれていたこと。黒人など有色人種お断りの差別ばかりでなく、ユダヤ人やメキシコ人お断りの場所や地区があったことなど…。

ルースは女の子。自身の学習や両親の考え方、教育方針もあり、〈おかしなことはおかしい〉と小さな頃から声を上げ続けていたことが丹念に綴られ、描かれています。

驚きは、1970年頃でも〈女の子に生まれたというだけで、選ぶ道が限られ、職場や待遇で明らかな差別があった〉ということ。ヒッピームーブメントや学生運動の季節を終えても変わらない社会があったことに驚きます。

この絵本で一番の場面は、ルースが女性の平等を求めて裁判で戦うところですが、これは女性だけのことではなく、男性にとっても社会や家庭で縛り付けられていることも同時に意味していることもルースを通して作者と訳者の気持ちが感じられます。

表紙の顔から強い意志、信念が窺え、それが最後まで伝わっています。だからこそ、社会を変えた、変えられたのかもしれません。

絵本だけでは不足の人のために、「ルースをもっと知るために」という解説文と個人年譜があり、人となりを十分知ることができます。ていねいな編集意識が強く感じられる1冊。

「わたしは反対!」