読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

DVD「ジョー・コッカー マッド・ドッグズ&イングリッシュメン」(2005) 

これは映画化され、高校生の時に映画館で2回観た。当時は、ライブ映像そのものが珍しく、「ウッドストック」のようなライブ満載ではなかったけれど、主役のジョー・コッカーよりも、不気味だけれどバンドばかりではなくステージ全体をコントロールしていたレオン・ラッセルのカリスマ性にすっかり気を奪われ、夢中になった記憶がある。

作品はジョー・コッカーレオン・ラッセル率いるバンドとともに、1970年の全米ツアーを行ったときのドキュメントフィルム。

ライブが始まる直前、レオン・ラッセルがメンバーに声をかけて輪を作り、「WILL THE CIRCLE BE UNBROKEN」をタンバリン一つでリズムを取り、ゴスペルで歌い出し、メンバー全員の素晴らしいコーラスで歌い上げ、「デルタ・レディ」のライブに映像が切り替わっていく…一瞬でこの作品に引き込まれていく。

主役はジョー・コッカーのはずが、作品全体を観てくとレオン・ラッセル率いるバンド全体のコンサートツアーの記録になっている。家族を同伴し、バンド全体が家族のように一体化し、そのことがアメリカ南部特有のゴスペルやブルース、ソウルが混じったスワンプ・ロックと通称呼んでいた音を生み出していく。豪華で厚みのあるコーラス隊、ホーンセクションと弾けるリズムを叩き出すパーカッションの重奏さとまさに南部のリズムを奏でるピアノ…ほとんどがこのリズム重視のバンドサウンドで観客をステージに引き寄せる。曲によって弾くレオン・ラッセルのくねくねギター…このステージは、1973年の3枚組レコード「レオン・ライブ」でよりパワーアップして集結する。

ビートルズの「サムシング」や「レット・イット・ビー」のゴスペル・フィーリングあふれるシーンは今観てもすごい。

あちこちのネット情報でこのときのメンバーを紹介しているのが、リタ・クーリッジだけはこの後すぐに名前と顔が一致する存在になったことを覚えている。

このDVDを観てびっくりしたことを一つ。DVD最後の方で、メンバー全員揃って公園でパーティを開き、パーティの終わりかけに一人の男が自分の物語を語り出すが、語り終わってから参加者のメンバーの一人がその詩のことを知っていると言い出す…「詩」が普通の身近なこととして読まれ、記憶され、語るという文化のあり方に驚いた。

ジョー・コッカー マッド・ドッグズ&イングリッシュメン」DVDジャケット