読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

山口恵以子「食堂のおばちゃん12 聖夜のおでん」(ハルキ文庫 2022)

このシリーズは最初から読んでいる。姑と嫁が下町の家庭的な「はじめ食堂」を営み、さまざまな人たちが常連客となったり、ふらりと立ち寄って手頃な値段の親しみのある手料理を味わい、いろいろな人生のひとこまを見せる…おいしそうな料理を想像しながら、はじめ食堂に関わる人たちの物語を垣間見る…そんな楽しみが詰まっている。

主人公をはじめ、物語に登場する人たちの背景がくっきりしていて、いくつかの短編そのものに料理が関わることで物語りの世界に入りやすく、しかも読みやすい。

はじめ食堂の家族や店の料理に関わる人々、さまざまなタイプの客たちも物語の進み具合とともに少しずつ替わり、物語の深みと新鮮さを絶えず補っている。

著者が考案し、物語の中でもメニューとして使われる料理のレシピがおまけに付いているのもお得感がある。最後のお話には、著者のもう一つの料理小説シリーズ「婚活食堂」の登場人物がちらりと表れているのもご愛敬。

「聖夜のおでん」