読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

ボブ・グリーン「十七歳 1964春」「十七歳 1964秋」(文藝春秋 1988)

井上一馬/著「十七歳の日記 1973」と同じ17歳当時の日記をベースにしながら、その9年前とはいえ、日本とアメリカの普通の暮らしの中の豊かさの違いや高校生の日常の違いが2作品を通して浮き上がってきた。

この2冊セットは、ボブ・グリーンがジャーナリストを目指し、自分を鍛えるための方法として書きためた1年間限定の日記が下書きとなっている。

「春」の一番のできごとは、ビートルズアメリカにやってきて「エドサリヴァン・ショウ」に2度出演し、それをボブ・グリーンがテレビで直接見たこと。

こんな風に書いている。「ビートルズがテレビのエドサリヴァン・ショウに出た。かつてこの4人ほどアメリカに大きな衝撃を与えたものはなかったにちがいない。僕はすでに、ラジオで彼らのレコードを聴いたり、新聞で写真を見たりして十分強烈な印象を受けていると覆っていたが、そんなのはテレビで彼らを見ることに比べたらほとんど無に等しい体験だった」。また、最初の出演の翌日には、「朝、ホームルームが始まる直前にロッカーるむに入っていくと、10人ほどの男子がそろって大鏡の前に立って、額に前髪をなでつけていた」とポール・マッカートニーの髪型に似せようとしていることを書いている。

「春・秋」全編を通して他にも高校生が自動車を運転し、街をさまよいガールフレンド探し、パーティや飲酒…まるで…映画「アメリカン・グラフティ」の世界がリアルだったことを見せつけられる。

ビートルズに関しては、「春」の中で、10月10日にラジオでビートルズの曲を初めて聴き、アルバム「ミート・ザ・ビートルズ」を買い、「秋」の中では映画「ア・ハード・デイズ・ナイト」を映画館で観て、まさにビートルズ直接体験世代だったことが日記という私的な記録で確認できる…日本との圧倒的な違いを感じる。

個人的には、ずっとずっと跡に、レーザーディスクで「ザ・ビートルズ・ファーストUSヴィジット」でエドサリヴァン・ショウの片鱗を知り、DVDで完全版を知るが、それは後追いで確認作業のようなもの。

象徴的なできごととして、「秋」の中で、「キングストン・トリオ」のコンサートに出かけるが、1月には夢中になっていた彼らのフォークソングが、ビートルウを体験した後ではつまらなく感じたと書いていること。

また、ボブ・グリーンは、「ア・ハード・デイズ・ナイト」の感想を地元のジュニア向けの新聞に投稿し、採用されたり、地元の新聞にケネディ大統領暗殺から1年を経たコラムを投稿し、これも採用され、23歳でアメリカ最年少のコラムニストになる才能の片鱗を見せている。

ちなみに表紙の若者5人は、ボブ・グリーンを含めた5人の仲間「ABCDJ」。

60歳を前にして、この5人の変わらぬ友情を描いた「ABCDJ」は、普遍的な価値がある読み物。

「十七歳 1964春」

「十七歳 1964秋」