読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

井上一馬「モーニング・レイン」(新潮社 1992)

副題は、「十七歳の日記 1973」。著者は、〈あとがき〉で、「…きわめて不完全とはいえ、当時の日記がそのままの形で残っていたぶん-あとから思い出して書かれたものではないぶん-もっとも真実に近い(日記形式の)青春小説だといえるのではないかと思っている…」と綴っています。

1973年(昭和48年)に私より2歳下の著者が17歳だった頃の日常や感じ・考えていたことが素のままページに表れています。

日記は1973年の1月1日から12月31日までの1年間。高校1年から2年に進級し、当時の社会や時代風潮などをに影響されながらの高校生活を垣間見る思いです。

東大・京大へ数多く進む進学校と北海道のかたすみにいた当時の高校生とでは学業での差はあるものの、当時の高校生の基本的なところは同じかな…と感じました。

著者がぼんやりと思っていたその頃の夢…作家になりたい…は、ボブ・グリーンのコラムの翻訳で一気に花開いた、そう感じます。

この本の出版の過程は分かりませんが、著者が訳したボブ・グリーン「十七歳 1964春」(1988)がきっかけになっていたのでは…と。

タイトルの「モーニング・レイン」は、「10月7日 朝起きると、窓の外に朝の雨(モーニング・レイン)が降っていた。 In the early mornin' rain,with…」と英文が続きますが、最近、聴き直しているスティーヴ・フォーバートのアルバムタイトルで1曲目の「EARLY MORNING RAIN」の歌詞だと知りました。これは、ゴードン・ライトフットのヒット曲。著者はこの頃、フォークソングを聴いていたようなので、カバー曲を聴いていて耳に残り、詩を書いていたことからこの曲の詩から影響を受けたのかも…。

この本でも数回、ヘルマン・ヘッセに触れていますが、世代共通の文学だったのだなと改めて思いますが、50年前の高校生活は今の17歳には通じないのかも…。

井上一馬「モーニング・レイン」