読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

マイケル・モーパーゴ:作「西の果ての白馬」(徳間書店 2023)

作者の前振り〈はじめに〉が、5つの短編すべてに流れている肝そのもの。

イギリスの南西の端にある半島にゼナーという小さな村があり、〈大昔からこの村では、説明のつかないふしぎなことがたくさん起こってきた。たとえば、人魚やスプリガンという妖精、ノッカーと呼ばれる小鬼、そして魔女の言い伝えなどがある〉という一文は、〈不思議〉の形を少し変えて読ませる物語として読者に届けてくれます。

個人的に好きな物語は、表題の「西の果ての白馬」と「アザラシと泳いだ少年」。

小さな村とその自然、家族と力を合わせて農業にいそしむ暮らし、ふしぎな人たちの存在をすなおに信じる子どもたち、自分がいるべき場所を見つける子ども…ただただ惹かれる物語を楽しむ、楽しめる作品集。表・裏表紙の絵が物語の世界を教えてくれます。

「西の果ての白馬」