読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

宮部みゆき「よって件のごとし 三島屋変調百物語八之続」(KADOKAWA 2022)

1話目の「賽子と虻」では、どんな小さな生き物にも神様がいて、その神様たちが丁半博打ですべてを賭けてしまう博打にひそむ一瞬のきらめきとおろかさに、悲喜劇両方のおかしみがにじみ出ている。村人が受け入れている土地の神様〈ろくめん様〉が村にもたらした豊かさとこっぴどく負けた代償の重さから降りかかる悲劇の始まり…人間界から超越する存在の神でさえ、為政者が勝手に決めつける信仰の善悪によって土着性そのものがずたずたにされてしまうむごさが強烈。

3話の中では、この第1話が自分にとっては好み。

このシリーズは、おちか抜きには成立しない怖さとの対峙がずっとあり、おちかの後を継いだ富次郎はもとより、富次郎の加護役お勝の存在がますます大きくなっているように感じる。次回は、おちかの子どもの誕生が軸に…。どんな怪異が待っているのやら。

「よって件のごとし」