読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

まはら三桃・作「つる子さんからの奨学金」(偕成社 2023)

つる子さんは、主人公のわかば、いとこの樹の曾祖母。つる子さんが子どもの頃は、分家で女の子は高等教育を受けさせてもらえない時代、そんな理不尽に逆らい本家に座り込みをして進学することを勝ち取ったというエネルギーあふれる女性です。

そのつる子さんが、高校受験を控えているわかばと樹に奨学金を出すというのです。ただそれには、今の実力より①ランク上にチャレンジするという、わかばにとっては厳しい条件がつきます。

物語は、男だから、女だから、女だてらにという性差別、本家や分家という昔ながらの価値観から解き放たれ、自分の能力を高め、自分のやりたいことを見つける、見つけるために自分を磨く…そんなことを読みながら自分だったらどうだろうと問いかけながら読める物語。

塾ではライバルとなるクラスの友だちと語り合う自分の未来、優等生の樹が密かに抱いている壮大な夢、引っ込み思案なクラブでの役割の変化など、わかばはふらふらしながらも自分で自分の高みを目指したいという気持ちをふくらませていきます。

曾祖母、祖父母、両親、いとこ…家族の物語でもあり、わかばが目覚めていく物語でもあり、友だちとの気持ちのやりとりから気づく物語でもあり…いくつもの枝葉の物語を楽しめる作品。

「つる子さんからの奨学金