塩野米松「ひびけ!さよなら行進曲」(フレーベル館 2003)
「夕陽丘分校シリーズ」4作目で最終巻。
今回は、児童数わずか7人の分校でも子どもたちの毎日は昨日と今日は違い、同じ繰り返しの日などなく、退屈な時間はないということと、子どもたちの日常に新しい子どもたちが入ってくるとどんな日常になっていくのかを描いています。
2.3作目で子どもたちが地域ぐるみで演じたミュージカルの中心にいた6年生の友紀に東京からやってきた転校生と文通を始めた本校の子どもを加え、ずっと1人だった友紀がリアルな同級生、友だちを体感することで心に直接響く感情をぐんと豊かに育みます。
多分に、来春には分校を巣立ち、本校の中学校へはばたくための準備として作者が配置したのかもしれませんが、転校生が抱える心の傷を子どもたちや先生、そして地域ぐるみで受け止めていくところにも読み手の子どもたちが共感するところ。
シリーズの表紙やさし絵を担当する後藤えみこさんの絵が、分校の子どもたちそれぞれの個性ってきっとこうなんだと思わせる味があります。
20年前の作品とはいえ、転校生の傷の深さやそれを乗り越える子どもたちのやさしさ、たくましさは今でも十分通用する作品。