読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

令丈ヒロ子「病院図書館の空と青」(講談社 2022)

ベテランの児童文学作家が物語の世界で遊ぶ楽しさを届けてくれました。
病院図書館という舞台設定、「長くつ下のピッピ」や「赤毛のアン」など古典の名作の数々、その作品の中にひそんでいるアオという少女、本好きの女の子・空花(そらは)が入院した病院図書館で偶然手にした「長くつ下のピッピ」のページから空花は物語の世界に引き込まれ、アオと出会うふしぎさ…いくつもの読ませるしかけがお楽しみ。
この作品は、本の世界は楽しいよ、ちょっと読んでみない?という作者からのお誘いがテーマの一つ。「長くつ下のピッピ」や「赤毛のアン」の楽しい場面をさりげなく紹介しているので、読んでみたいという気持ちになれるかも…。

そして、空花とアオが共通する本の世界を通して互いに言い合える成長物語になっています。もう一つ、転校したばかりの空花が本には興味がないクラスメイトとどう接したらいいのか分からなくなりますが、気持ちの持ち方で少しずつ話せるようになっていくという友だちづくりの物語にもなっています。

病院図書館を通して出会う人たちがつながりあい、物語を奥深くさせ、作者のうまさが光ります。裏表紙の手前のページにある〈遊び〉を見つける楽しみもあります。

「病院図書館の空と青」