読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

なかがわちひろ・作 高橋和枝・絵「とっても すてきな おうちです」(アリス館 2023)

息の合った2人の作家の組み合わせで、心地良い物語。

アリ、チョウチョ、クモ、ツバメ、ネコが順につながりあって、それぞれ自分の巣/家を自慢し合うほほえましい物語。

自慢のポイントが、それぞれ違い、その違いの特徴がなるほど…です。

最後まで読むと、家の庭の小さな世界を描いていることが分かりますが、生き物それぞれの営みが楽しい文とやわらかで色を抑えた絵が包み込んでいます。

2人とも好きな作家ですが、今回は互いの得意分野を活かしているように感じます。

ネコが出てくると、高橋和枝さんの絵が光ります。

「とってもすてきなおうちです」

 

マイケル・モーパーゴ:作「西の果ての白馬」(徳間書店 2023)

作者の前振り〈はじめに〉が、5つの短編すべてに流れている肝そのもの。

イギリスの南西の端にある半島にゼナーという小さな村があり、〈大昔からこの村では、説明のつかないふしぎなことがたくさん起こってきた。たとえば、人魚やスプリガンという妖精、ノッカーと呼ばれる小鬼、そして魔女の言い伝えなどがある〉という一文は、〈不思議〉の形を少し変えて読ませる物語として読者に届けてくれます。

個人的に好きな物語は、表題の「西の果ての白馬」と「アザラシと泳いだ少年」。

小さな村とその自然、家族と力を合わせて農業にいそしむ暮らし、ふしぎな人たちの存在をすなおに信じる子どもたち、自分がいるべき場所を見つける子ども…ただただ惹かれる物語を楽しむ、楽しめる作品集。表・裏表紙の絵が物語の世界を教えてくれます。

「西の果ての白馬」

 

ザ・キャビンカンパニー「がっこうにまにあわない」(あかね書房 2022)

晴れた日の朝、7時47分。男の子が学校に向かって必死に走っています。8時までに着かないと遅刻です。とっても大事なことが学校の行事であるのです。

でも時間が迫る中、邪魔すること・ものが道の途中に待ち構えています。

大胆な構図やダイナミックな絵、あせるととんでもない妄想が湧いてきます…ザ・キャビンカンパニーの2人は構想とデザインがカッコ良く、好きな子どもははまるだろうなと、いつも思っています。

最後に学校で待っている〈何か〉は、ちょっとあっけにとられるかも。

「がっこうにまにあわない」

 

なかがわちひろ・作「まほろ姫とにじ色の水晶玉」(偕成社 2017)

まほろ姫」シリーズ2作目。

大テングの弟子になって定期的に勉強を教わるまほろ姫とタヌキの茶々丸ですが、今回はテングさまがお出かけするので違う展開に。でも、テングさまがお出かけするときに落とした〈よくばりぶくろ〉が最後においしいテングさまの食べ物に変身して終わるます。こまかいところにしかけがあって楽しめます。

お話は、まほろ姫の家に都からやってきた有名な絵師(?)と迷子になってまほろ姫の家で過ごすことになった小雪という女の子が〈春〉をテーマに、いろいろな物語が生まれます。

230ページほどもありながら、むりなくお話の展開を楽しめ、絵師の雲風の成長や小雪が何者なのかを少しずつ明らかになっていく自然な進み方が読みやすさにつながっています。

みんなが幸せな気持ちになって終わる物語は、いいなと思います。

人気が出て欲しいシリーズの一つ。

まほろ姫とにじ色の水晶玉」

 

なかがわちひろ・作「まほろ姫とブッキラ山の大テング」(偕成社 2014)

作者はいろいろなタイプの物語を書きわけていますが、今回は日本の風土を活かした楽しい物語。

タヌキの乳母:砧に生まれたときから育てられたまほろ姫と砧の子どもタヌキの茶々丸の冒険物語でシリーズ1作目。

まほろ姫と茶々丸は、砧から化け方を教わり、未熟ながらもいろいろなものに化けることができます。

まほろ姫は、人間だけれども化けられる。砧と茶々丸はタヌキだけれども人間のすがたに化けながらまほろ姫と一緒に暮らしている…ここが仕掛けのおもしろいところ。

化けるためにはテングから授かった葉っぱが必要。まほろ姫と茶々丸は砧からおこづかいとして葉っぱをもらっていますが、化ける遊びに使ってしまい足りません。

この物語は、葉っぱがたくさん欲しいまほろ姫と茶々丸がブッキラ山のてっぺんにある天福神社のカシワの木から葉っぱを取ってこようというプチ冒険が最初から予想できるお話…分かっていてもその中身が知りたくなるような作りがうまいな…と。

物知りだけれど自慢屋のテングとブッキラ山で出会うまほろ姫と茶々丸が、テングの困りごとを助けたり、ごちそうを作ったりしながら次第にテングと打ち解けていくくだりがハラハラしたり、笑えたり、安心したりと読んでとにかくおもしろい。

タヌキたちの満月おどりと砧の危機やふしぎなクダギツネの存在など、物語全体を盛り上げ、深める要素もたっぷり用意されているので、おもしろさはフルコース並み。

テングとの関わりは次作にも続く余韻もいいな…と。

まほろ姫とブッキラ山の大テング」



 

斉藤洋・原作 宮本えつよし・絵「こわいけど、おもしろい おばけずかん かがくのふしぎ」(講談社 2023)

「おばけずかん」シリーズの変化球的作品。これまでに登場したおばけに絡めて〈ふしぎ〉を解説してくれる楽しいお話集。

トイレの花子さんに絡めて、トイレットペーパーは水に流れるけれど、同じようなティッシュペーパーはどうして流れないのか?など…たくさんの「おばけずかん」に登場したおばけを思い出しながら、ちょっとしたふしぎを学ぶことができ、本好きではなあい子どもにうってつけ。表紙のにぎやかさも楽しい。

「こわいけど、おもしろい! おばけずあん かがくのふしぎ」

 

昼田弥子・作 シゲリカツヒコ・絵「かぜがつよいひ」(くもん出版 )

風の強い日、お母さんが買い物にでかけ、留守番の姉・弟が始める〈しりとり〉遊びを〈クセが強くてシュールな絵〉が子どもを引きつけて放さない作品。

「じょうろ」「ろくろ」「ろてんぶろ」で〈ろ〉始まりの言葉が見つからず、そこからとんでもない〈へんてこしりとり〉と〈現実からどんどん離れていく絵〉の楽しい世界が続きます。

シゲリカツヒコさんの作品は数年前に知り、「だれのパンツ?」「だ妙行列」「ガスこうじょう ききいっぱつ」「バスガエル」「ごじょうしゃありがとうございます」など、どこにもないふしぎな世界が好き。

中でも「ガスこうじょう…」のばかばかしさと真剣さは驚きでした。「ごじょうしゃ…」のようにノスタルジックな雰囲気がただよう作品も惹かれます。

「かぜがつよいひ」