読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

なかがわちひろ・作「まほろ姫とブッキラ山の大テング」(偕成社 2014)

作者はいろいろなタイプの物語を書きわけていますが、今回は日本の風土を活かした楽しい物語。

タヌキの乳母:砧に生まれたときから育てられたまほろ姫と砧の子どもタヌキの茶々丸の冒険物語でシリーズ1作目。

まほろ姫と茶々丸は、砧から化け方を教わり、未熟ながらもいろいろなものに化けることができます。

まほろ姫は、人間だけれども化けられる。砧と茶々丸はタヌキだけれども人間のすがたに化けながらまほろ姫と一緒に暮らしている…ここが仕掛けのおもしろいところ。

化けるためにはテングから授かった葉っぱが必要。まほろ姫と茶々丸は砧からおこづかいとして葉っぱをもらっていますが、化ける遊びに使ってしまい足りません。

この物語は、葉っぱがたくさん欲しいまほろ姫と茶々丸がブッキラ山のてっぺんにある天福神社のカシワの木から葉っぱを取ってこようというプチ冒険が最初から予想できるお話…分かっていてもその中身が知りたくなるような作りがうまいな…と。

物知りだけれど自慢屋のテングとブッキラ山で出会うまほろ姫と茶々丸が、テングの困りごとを助けたり、ごちそうを作ったりしながら次第にテングと打ち解けていくくだりがハラハラしたり、笑えたり、安心したりと読んでとにかくおもしろい。

タヌキたちの満月おどりと砧の危機やふしぎなクダギツネの存在など、物語全体を盛り上げ、深める要素もたっぷり用意されているので、おもしろさはフルコース並み。

テングとの関わりは次作にも続く余韻もいいな…と。

まほろ姫とブッキラ山の大テング」