読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

いとうみく「バンピー」(静山社 2022)

タイトルの「バンピー BUMPY」を調べると、「でこぼこ道のような、浮き沈みの多い、波瀾万丈」などの和訳があり、表紙のイラストがそのことを表しています。

3年前に母親が亡くなり、父親が5ヶ月前に理由も分からないまま失踪。主人公役の高校生のボク・成が小5、小4、小1の3姉妹の日常的な世話をし、そこへ失踪している父親の娘だという女の子・蛍が現れ…現実的ではないけれど、家族を意識し、父親・母親の問題を受け止めながらも、「いま必要なことは、いまを生きること…いま、隣にいるだれかの手をにぎって、転びながら、つまづきながら、でこぼこな道を一歩、半歩、進んで行く…オレたちはきっと大丈夫」という成の言葉が〈先へ進む〉心のさまを描いています。

主人公役は「成」だけれど、見る位置を変えると、両親が受けた傷をまともに受けた「蛍」と、その「蛍」との関わりが一番深く、全体を把握している成の叔母「小春さん」の物語とも言えます。

吉田秋生「海街 Diary」や瀬尾まいこ「そして、バトンは渡された」を思い起こす物語。

「いとうみく バンピー」