本来の「三方一両損」または「一両損」を改題し、噺の山場を職人二人の〈本気半分、江戸っ子の意地っぱり半分が愉快〉を〈ずばり、本気だけ〉でいったと作者の後書きで綴っています。そのため、最初から最後まで話がすっきりとつながり、読んでいて気持ちよさが残ります。
主人公の職人、左官の金太郎と大工の吉五郎二人の一本気な職人気質と、その正直さと職人気質を〈おもしろいやつら〉と誉める大岡越前のおおらかさを全面に出しているのが気持ちよさにつながっています。
手指の細かな描き方など文を補う絵が存分に語っています。表紙のタイトルが目に残っているとオチのだじゃれが楽しくなります。
裏表紙の心づかいもうれしいおまけ。