読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

斉藤洋「ティゲルファル」(あかね書房 2022)

新しい物語が始まりました。どこまで続くのか、どんな物語になっていくのかまったく想像できませんが、他の長編シリーズ同様、おもしろさは格別。

1巻目のタイトルは、「その夜、森で何が起こったか」。

後にティゲルファルと呼ばれるようになる少年が主人公。病気で死んだと思われ、移動する村の中に置き去りにされた少年が、老人・シュタブリンと出会います。老人は、一度聞いた言葉、一度見た景色を忘れない不思議な能力を持ち、老人と共に旅をして水辺の民の仲間入りをします。

人間が火を使うことを覚え、石器のやじりを木の棒に付けて狩りをしていた時代。

物語の形は、少年の冒険と成長をテーマにしているように見えますが、家族に関する感情の希薄さ、最初から背負うリーダーとしての役割、言葉で集団をコントロールしていく能力…どうもこれまでのシリーズとは違う要素が多そうです。

ティゲルファルとシュタブリンの対話は、考える力を身につけ、目の前の問題や課題をクリアするために必要な刺激を与え合う…物語を前に進ませる役割を果たしているかのよう。

1巻目にして、ティゲルファルが多くのグループをまとめ、グループ全員の命を守らなくてはならない場面を迎えます。

ティゲルファルが他の人とは違う能力にどう向き合い、手探りで未来を切り開いていくのか…次作がとにかく楽しみ。そして、短期間でシリーズ完結を望むばかり。

「ティゲルファル その夜、森で何が起こったか」