マイ・シューヴァル ペール・ヴァールー「テロリスト」(角川書店 1979)
マルティン・ベック・シリーズ10作目でラスト。
本筋の物語に入る前にマルティン・ベックが関わった2つの事件が、外国要人暗殺と首相暗殺につながっていく伏線の使い方が絶妙。
暗殺を未然に防ぐための〈こんなこと有り?〉の計画がお見事。40年以上前の時代だからできた計画とはいえ、現代よりも人間くさく十分楽しめた。
〈訳者あとがき〉に、著者夫は野がこのシリーズ10作でスウェーデン社会の10年を描きたかったと紹介しているが、若い世代の薬物や世界的な暴力への、警察組織の疲弊など読んでいて伝わってくる。
今回の物語は、ベックを中心とする得意分野は違うけれど傑出した能力を持つ5人のチーム、そしてベックの親友・コルベリの支えがすばらしい力を発揮している。
ハラハラしながらもブラック・ユーモアもあり、たっぷり良さを味わえる警察小説。
タイトルの意味も読んでみてなるほどと思うばかり。