読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

野村たかあき:作・絵「しばはま」(教育画劇 2018)

元は、「柳家小三治・落語〈芝浜〉より」。

大作の人情話をこれ以上は無理までそぎ落とし、夢を見たと勘違いしてから後半の目が覚めた魚屋の奮闘ぶりに焦点をあて、夫婦揃って温かい家族の物語に仕上げています。

表紙には、荒く押し寄せる波と財布が描かれ、どこか荒ぶれている魚屋の心を写し取っているかのよう。表紙をめくり、小三治師匠の話を理解するための前ぶれ解説があり、話の展開に伴い、魚屋の顔の表情が変わっていきます。

お仕舞いに近づくにつれ、魚屋と女房、子どもの幸せそうな顔があふれ、短い文では表しきれない心情をが伝わってきます。

シリーズ全体を通して、木版画が落語の世界と重なるようで、組み合わせの妙を発揮しています。

「しばはま」