阿部夏丸「泣けない魚たち」と「川中WOW(うお)部」シリーズ
読みたいと思いつつそのままになっていた「泣けない魚たち」を
ようやく読むことができました。
講談社文庫版で、表題作「泣けない魚たち」を含む、「かいぼり」
「金さんの魚」の短編3作収録。
自分にとっては、子どもの頃、実家近くの川で泳ぎ、釣りをした昭和30年代を
思い出す作品集。
川遊びができた時代、少しずつ川を含め事前の風景が変わっていく
高度成長時代、戦時中の体験が心から消えない時代が、3つの
短編の中で、「魚を介した川遊びの豊かさ」を通して
描かれ、時代を超えて読み継がれる作品の1つになっています。
「泣けない魚たち」のオリジナル出版が1995年(平成7年)。
その10年ちょっと後に「川中WOW部」シリーズが始まります。
(「レッツゴー!川中WOW部」「川中WOW部の夏休み」
「川中WOW部の釣りバトル」)
「川中WOW部」シリーズは、「泣けない…」を遊び心いっぱいの
エンタテイメント読み物にした作品で、これでもかというくらい
子どもたちが飛びつく楽しさを詰め込んでいます。
子どもたちに川遊びや魚釣り、河童などのふしぎなできごとなどを
存分に楽しんでもらおうという気持ちがバリバリ伝わってきます。
作者と「青い鳥文庫」編集部が相当話しあって作り上げたシリーズ
だと感じます。
2つの作品を読むと、味わう短編集、かつてあった昭和の子ども時代から、
読む楽しさを体験する、平成にだって川遊びはある…そんあことを対比しながら
おもしろさを感じることでしょう。