読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

川端誠「落語絵本 かえんだいこ」(クレヨンハウス 2010)

「落語絵本」シリーズ15作の14作目。

「絵本作家の百聞百見」(子どもの未来社)の「取材の大切さ」に、雅楽に使用する火焔太鼓はとても大きく、落語では演じることはできても絵本では絵にできず、一度は諦めたそうですが、取材で明治神宮雅楽の奉納を見たときに、中吊りの小ぶりで周りに火炎の形がある太鼓を発見して、絵本化を決めたことを書いています。

落語という想像させる芸ならできるけれど、絵にしてしまう絵本では壁になってしまう難題…落語を絵本化するには単に話の筋だけを書けばいいというものではない、が伝わってきます。

この作品、最初のページには遠くに富士山があり、江戸の町のあちこちにやぐらと半鐘が見える絵がどんと描かれ、火事のときの半鐘を鳴らす説明から話が始まります。

古道具屋の主人・甚兵衛さんのあまりじょうずではない生真面目な商いぶりと甚兵衛さんの尻をたたくおかみさんの性格が顔の表情からもすんなりとうかがえ、話の筋を端折りつつも道具屋、江戸の町、立派な武家屋敷など落語の世界が判る絵がていねいに表され、太鼓が大金で売れたときの甚兵衛さん、最後のおかみさんの驚くさまは絵本ならではの演出。

見開きのページをめくると自然にお話の展開を楽しめ、最後のオチをなるほどとうなずき、話を二倍楽しめます。

著者による〈あとがき〉を読むと、「火焔太鼓」の世界がもっと広がります。

表紙の太鼓と裏表紙の火焔太鼓の絵がそれを良く表しています。

「落語絵本 かえんだいこ」