野村たかあき:作・絵「らくごえほん 千両みかん」(教育画劇 2020)
サブタイ
トルは、「柳家小三治・落語〈千両みかん〉より」。
表紙が表・裏通しの1枚で、大きな商家・大店の構えとその前を行き交う人通り、そして表紙の中央に意味ありげな1個のミカン。一度読んでからこの表紙の絵を見るとお話の世界がふくらみます。
表紙をめくると江戸時代の大店で働き、小僧から出世して番頭になり、のれん分けしてもらい自分の店を持つまでの仕組みを簡単に解説しています。この前提が分からないとオチのおかしみが伝わらない…落語を楽しむためにの必需品。
話は、大店の絶対的な力を持つ主人や落語の世界によくいる若旦那、そして一心に仕える番頭さんの悲哀を限られたページ数で表現しています。
絵のうまさは、話の最後に近づくにつれ、番頭さんの後ろ姿だけを描き、顔の表情を見せないところ。若旦那の天真爛漫さと対照的。
オチのページは、考え抜かれた作りになっています。ただ、子どもにどれだけ伝わるか…です。