川端誠「落語絵本 ひとめあがり」(クレヨンハウス 200)
おめでたい正月ネタの落語を絵本にした作品。床の間の正月用掛け軸をほめると「一つ、目があがる」というおめでたいお話。
落語ではおなじみの八つぁんが、年始のあいさつで横町のご隠居を訪ね、床の間のおめでたい掛け軸を見せられ、ご隠居から掛け軸を誉めるときの数字にちなんだ言葉を教わります。
八つぁんが大家さん、お寺の住職、大工の棟梁、小唄の師匠を訪ね、同じように床の間の掛け軸を誉めますが、そのたびに八つぁんが考える数字にちなんだ言葉より一つ多い…。
作者は、普通ならおめだたい「七」で終わるところを先に進め、作者流のオチに変えています。
この作品は、聴いて想像する落語ではなく、絵をじっくり味わい、文を楽しむ絵本ならではの落語。
正月らしい雰囲気、玄関や室内の飾り物、床の間の飾りとおめでたい掛け軸の説明、
お正月という冬の暮らしなど、絵だけでもめでたさを感じることができます。
掛け軸の一つには、内田麟太郎さんの詩集から拝借した詩を使い、八つぁんに楽しくめでたい解釈をさせています。
何回も読んで、そのたびに味わいが深める1冊。