読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

ナンシー関「超傑作選 ナンシー関 リターンズ」(世界文化社 2022)

堪能しました。以前。「噂の真相」を購読していた時、楽しみだったのは小田嶋隆さんとナンシー関のコラム。

ナンシー関作の雑貨やお遊びグッズ、単行本では収録していない作品の数々、分厚さとたっぷりのおまけ、そして編集の良さ、ありがたやです。

どれもこれもだけれど、「松田聖子の両手握手」はさすがの鋭い観察眼。詳しくは読んでもらうに限るが、ざっと引用すると、「松田聖子が芸能界に残してきた数々の功罪のうち、ひとつだけ気になるものがある。それは〈両手握手の伝統〉…この両手握手のそもそもは松田聖子から始まっているのである…この悪しい伝統の始まりの瞬間を、私ははっきりと覚えている」。

アイドルからファンへの施しという商品化とは別に、市井の素人レベルまで及んでいることに、「松田聖子の残した、最大の罪のひとつであろう」と書いています。

初めて読んだ「彫っていく私 ナンシー関自伝」もそうだけど、読める文のうまさを今更ながら感じています。

没後20年で生誕60年、30代ですさまじい数のとっぽい消しゴムはんこを彫り、テレビや雑誌越しから彼女のアンテナにひっかかった有名人を料理してしまう腕の良さは格別。

かつて、田中邦衛がマウスを追いかけるスクリーンセイバーのようなものをダウンロードして遊んだことも思い出しました。田中邦衛もののコラムもいくつか収められているけれど、うなってしまう。

 

「超傑作選 ナンシー関 リターンズ」