読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

松重豊「空洞のなかみ」(毎日新聞出版 2020)

サンデー毎日」連載のエッセイとコロナ禍による自宅蟄居生活中に生み出した妄想短編物語を組み合わせた1冊。

自身が〈妄想と割り切れば、勝手気儘な世界へ旅してみるのも面白いだろうなと思う…〉と後書きで書いているように、〈俳優の自分が訳の分からない映画らしき場面に穂織り出され、その世界で遊ばれる〉と最後の場面はどのようなオチになるのか〈妄想〉がなせる物語12編…後半のエッセイとセットになっている話もあり、〈俳優から離れられない〉人ならでは、だからこそ、それゆえのお話集。

孤独のグルメ」チーム愛もエッセイで描かれ、ちょっぴりでもその世界に触れることができたようで単純にうれしい。

前半の短編小説群は、最初と最後がぐるりとまわってつながるようで、粋な演出を感じ、表紙のイラストにもそれを感じる。

雑誌連載時にはどんなふうに使われていたのか判らないが、エッセイの最後にちょこっと描かれるイラストのうまさと味のあるコメントが実に楽しい。

松重豊「空洞のなかみ」