読み・聴き・書きクケコ

本と音楽の雑記帳

内澤旬子「カヨと私」(本の雑誌社 2022)

以前読んだ「内澤旬子の島へんろの記」(光文社)に続く小豆島での作品。

白いヤギのカヨと著者との貴重な時間を過ごしている日々を綴った文。エッセイでもなく記録でもない、物語のような不思議な感覚の作品。

福音館書店発行の雑誌「母の友」に2016年4月から2021年3月までの5年間連載した文で、カヨと著者の関係を綴っています。

カヨとの2人暮らしからカヨの出産を経て家族が増えたり、減ったりしながらも、著者とカヨとの幸せな関係が伝わってきます。

カヨとの気持ちの通い合いを著者からの語りかけの文が沁みてきます。いろいろなできごとが綴られていますが、静かな文が印象的。著作は読んでいるけれど、対象とするものや自分に対する観察がすごい。著者が描いたカヨやカヨの家族のイラストがまさしくそう!愛くるしくて華奢そうなカヨが出産を経て母親らしくなり、最後の方ではでっぷりとしたおっかさんヤギになっていく表情がステキ。時とともに関係が変わっていくイラストがとてもリアル。

共通するのは、長い時間・年月をかけてそのテーマに向き合って書き、仕上げているので記録でもあり、心情的であり、物語のような不思議な作品になっているのか…と。

内澤旬子「カヨと私」